英No.2のドラッグストアがECを伸ばして「店舗も拡大」できるワケ “Z世代特有”の消費行動をどう攻略?: がっかりしないDX 小売業の新時代(1/3 ページ)
英国でナンバー2のドラッグストアチェーン「Superdrug」は、さまざまな施策で成長を続けている。ここでは施策を「3つの循環」に整理し、日本のドラッグストアチェーンが学ぶべきポイントを紹介していく。
連載:がっかりしないDX 小売業の新時代
デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
2026年4月、英国のナンバー2ドラッグストアであるSuperdrugの店舗をロンドンとマンチェスターで視察しました。1位であるBootsは店舗ごとに提供しているサービスや店舗デザインがバラバラで、調剤を軸に堅実に利益をあげています。対してSuperdrugは、薬を中心にしたドラッグストアというより、手頃な価格で美容を試し、施術を受け、SNSで体験を共有する場所です。
Superdrugの業績は順調です。売上高は2022年の13億6700万ポンドから、2025年には約17億ポンドまで拡大しました。3年間の増加率は約24%です。2025年の税引前利益は1億4410万ポンドで、5年連続の増収増益となりました。英国のハイストリート(町の中心にある主要な商店通り)全体が客数減少に苦しむ中での成長です。
ECと店舗拡大を両立
成長の一因は、実店舗への積極投資です。2024年には13店を出店し、45店を改装しました。2025年には25店、2026年にはさらに30店の出店を計画しています。
一般的なDXでは、ECが伸びるほど店舗は減ると考えがちですが、Superdrugは逆です。ECを伸ばしながら、店舗を大型化して増やしています。背景にあるのが、親会社A.S. Watsonの「O+O」(Offline plus Online)戦略です。
A.S. Watsonは香港のCK Hutchison Holdings傘下にある、世界最大級のヘルス&ビューティー小売グループです。12ブランドで世界に約1万7000店を展開し、Superdrugを2002年に傘下へ収めました。グループは調達、PB開発、会員データ、デジタル基盤を提供し、Superdrugはそれを英国市場向けに実装する関係です。
「O+O」は、オンラインから店舗へ送客するO2Oの言い換えではありません。A.S. Watsonは、顧客を一方のチャネルへ移すのではなく、いつでも、どこでも、どのチャネルでも一体化した体験を提供することだと定義しています。店舗とECの売り上げを奪い合わせず、両方を使う顧客を増やす考え方です。
著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」シニアフェロー Nextリテール分科会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質2025DX』
具体的に「O+O」をどう実践しているのか?
SuperdrugのO+Oを象徴するのが、大型店に導入している「Beauty Playground」です。
筆者が8店舗視察した中でも、新しい店舗であるManchester Trafford Centre店では、商品を試す「Try Me Tables」、リングライトを備えたSNS用コンテンツスペース、ブランド担当者による説明などを組み込んでいました。
併設するBeauty Studioでは、ネイル、眉、まつげ、ピアッシングなどの施術を提供しています。商品を棚から取って会計するだけならECでも可能です。しかし、色や質感を比較し、その場で試す。さらに専門スタッフから提案を受け、施術まで完了する体験は店舗にしかつくれません。
一方、ECは店舗に置き切れない商品を補います。SuperdrugはEC単独の売上高を公表していませんが、オンライン・マーケットプレイスは4万1000品以上を掲載し、2024年の売上は前年比107%増となりました。店舗では売れ筋と体験価値の高い商品を“編集”し、ECはロングテールを持つ。「全部を店頭に並べる」のではなく、棚をオンラインへ拡張しているのです。
顧客はアプリで店舗在庫を確認し、注文から最短30分で店舗受け取りを利用することもできます。250店以上を起点にした即日配送にも対応しています。店舗は売り場であると同時に、受け取り拠点、配送拠点、サービス拠点にもなっているのです。
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