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「バイト出身の22歳社長」から3年──ココイチFCトップが年商100億円を「絶対できる」と言い切るワケ(1/2 ページ)

「カレーハウスCoCo壱番屋」などのFCを展開するスカイスクレイパーの諸沢莉乃社長は、高校時代のバイト入社から22歳でトップへ電撃就任した。離職率25%とされる飲食業界において、全31店舗を自ら巡回し、人を「育成」ではなく「応援」する現場主義で成長をけん引。「誰に継がせるか」ではなく「どんなビジョンに託すか」で選ばれた事業承継の解や、M&Aを交えて挑む「10年で年商100億円」への戦略を明かす。

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 制服に袖を通し、厨房(ちゅうぼう)で爽やかな声を響かせる──。「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)などのフランチャイズを展開するスカイスクレイパー(群馬県太田市)の諸沢莉乃社長は、今も月に一度、運営する全31店舗の現場に立ち、従業員とともに汗を流す。

 2017年に高校1年生でアルバイトとして入社し、2024年に22歳で社長へ電撃就任。「アルバイト上がりの若き女性社長」として世間を大いに驚かせた。いま諸沢社長が見据えているのは、単なる話題性ではない同社の壮大なビジョンだ。

 就任3年目を迎えた諸沢社長が掲げるのは「今後10年間で年商100億円企業へ」「10業態への展開」「グループ20社の設立」。原材料費の高騰や深刻な人手不足、そして飲食業界における離職率の高さという逆風が吹き荒れる中、なぜ彼女は「絶対できます、絶対やります!」と言い切れるのか。

 その裏には、現場の課題を置き去りにしない接客指導と、人を「育成」するのではなく「応援」するという独自のマネジメントがあった。

 6月に開催されたビジネスイベント「Climbers 2026」の登壇でも、注目を集めた諸沢社長。「誰に継がせるか」ではなく「どんなビジョンを持つ人に託すか」という、日本の事業承継に一石を投じる先代会長との二人三脚の舞台裏、そして「裏で歯を食いしばり、表で一番元気でいる」という独自のリーダー像に迫る。


もろさわ・りの 2001年生まれ。横浜市出身。2017年、高校1年生のときに「CoCo壱番屋緑区中山店」でアルバイトとして働き始める。2024年5月から現職。2026年4月期の売上高は25億5700万円。従業員数は488人(社員63人、アルバイト425人)。以下、クレジットのない写真はClimbers提供

「本社と現場の溝」をどう埋めるか 社長自ら全店舗を巡る意味

 スカイスクレイパーは現在、カレー店のほか、ラーメン、美容店を31店舗展開している。社員は63人、アルバイトは425人で、2026年4月期の売上高は25億5700万円だ。

 FCビジネスの難しさの一つに、商品ラインアップも味も本部に決められている点がある。諸沢社長に差別化の方法を聞くと「うちはもう接客ですね」と即答した。

 ココイチには「ニコ・キビ・ハキ」というモットーがある。「ニコニコ笑顔で、キビキビと機敏に、ハキハキと爽やかな表現や行動を実践しよう」という意味だ。スカイスクレイパーは特にそれを厳しく、細かく指導しているという。

 ニコ・キビ・ハキを実現するために、諸沢社長は1カ月の間にスカイスクレイパーの全店を1回は訪れる。「制服を着て、現場に入り、みんなと一緒に汗をかきます。ピークの時間帯はこのシフト数だときつい。だったらもう少し増やしましょうなどと、現場の実態を把握することで改善を図っています」

 もちろんこのような方法論は、全店ではなく、あくまで1店舗ずつの解決策にはなる。だから経営全体という視点で見た場合は、答えが異なる可能性もあるという。「まだ、どうバランスを取ったら双方にとっていいかを考えられるレベルにはなっていないかもしれないです。ただ、現場の問題や会社が抱える課題について、経営会議で話せるようになってきました」

 多くの日本企業でも、本社と地方の乖離(かいり)はしばしば発生する。諸沢社長の場合は、自ら現場に入り続けた結果、溝を一定程度、埋められるようになってきたという。

離職率25%の飲食業で「人が辞めない」マネジメントの秘密

 厚生労働省が2025年8月に発表した「令和6年(2024年)雇用動向調査結果の概況」によると「宿泊業、飲食サービス業」の離職率は、一般労働者、パートタイムを合わせて25.1%と産業別で最も高い。

 「給料はだんだん上がってきています。当社はこの10年間で100億円企業にするというビジョンを掲げていますから、皆さんが働きやすい環境づくりが重要です。私が社長に就任する前から、西牧大輔会長が風通しのいい会社を作ってくれていました。人の悪口を言う人がいない面は、魅力的だと思います。そういう魅力的な会社でなければ、私もアルバイトを続けられなかったでしょう」

 事実、人材確保はそれほど苦労しておらず、すぐ辞める人も少ないという。その要因の一つとして、採用面接はもちろんのこと、社長自身が人材面について多くのことに関わることが挙げられる。

 「面接では、その人がどうなりたいかを聞き『その姿を応援したい』と思った人を採用します。西牧会長が言うのですが、人を育成するんじゃなくて応援するのです。そうなるとコミュニケーションを取る際にも『指摘』ではなく『アドバイス』になって言葉の意味が変わります。そういうマネジメントをとても大切にしています。100億円企業になってもそれは失ってはいけないと考えていますね」

 人材は育成するのではなく、応援する――。これは管理職にとって、人材を確保するためのヒントになりそうな考え方だ。

 「100億円企業にする」という目標の根拠を聞くと「やると決めたからです」と力強く語る。第一手として、会社をホールディングス化する計画だという。その上で、逆算して事業計画を進めていくと話す。

 「経営会議の時に、やり方を変えたり、目標を修正したりすることも可能です。私一人では行き届かない視点を、皆さんがカバーしてくれます。みんなで一丸となって動いています。ですから絶対できます! 絶対やります!」

 2025年9月には、病院向けの給食会社ミールオンデマンドを買収した。業態を増やしていくのは簡単ではない。M&Aを手掛ける会社と一緒に案件を探しており、分野は問わず縁がある企業があれば、積極的に事業を広げていく考えだ。


2025年9月には、病院向けの給食会社ミールオンデマンドを買収した(プレスリリースより)

「22歳で抜擢」の裏にあった“ビジョン逆算型”承継

 事業承継は、日本企業の大きな社会課題だ。スカイスクレイパーは、諸沢社長が20歳で社長就任の打診を受諾したときに、経営チームを創設。綿密な計画のもとに事業承継を実行している。

 経営チームは西牧会長、木村一弘常務、6店舗を管理するエリアマネージャーなど5、6人で構成されている。「メンバーに変化はありましたが、いろいろなことを教えてもらっています。まだ、社長として成長が追い付いていないところもありますが『会社としてこういうことを見せていかなければいけない』と思うところは、ここ数年、発言ができるようになりました」

 社長就任1年目は覚えることが多すぎて「自分の感情がなかった」というほど、目まぐるしい日々だった。2年目には少し余裕が生まれ、感情的なものが少し感じられるようになったという。

 2026年は、西牧会長が経営面で並走してくれる最終年だ。「社長業に本当の意味で身が入ってきた時に(会長の)退任か……という思いもありますが、最後だからこそ、今は徹底的に会長から学んでいます」と微笑む。

 西牧会長が諸沢社長に打診した際、意識したのは「誰に頼むか」(血縁や役職)ではなかった。「どんな人にやってほしいか」(必要な資質)だったという。事業承継をテーマにした講演で2人そろって登壇する際にも、この視点が参加者に大きな気付きを与えている。

 「多くの方は『誰に継がせるか』という人物探しから考えがちです。ですが本当は、会社がどうなりたいかというビジョンから逆算し、それを実現するために『どんな人物像が必要か』を、ゼロベースで考えることが先なのです」

 副社長や親族の昇格が一般的な日本企業において、スカイスクレイパー流の承継は、シンプルでありながら強力な盲点を突いている。将来、次世代へバトンを渡す際にも、諸沢社長はこの「ビジョン逆算型」で後継者を選ぶつもりだ。


「Climbers 2026」では西牧会長(左)と諸沢社長(右)が2人で写っている写真を投影(筆者撮影)

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