「作ったRAGは休眠状態……」 直方市のAI活用、市長がCAIO就任で挑む「年間3.5万時間削減」(1/2 ページ)
全職員が使える生成AIを導入しても、利用は一部に偏った――。福岡県直方市の試行錯誤から、AI導入の「その先」に必要な取り組みを読み解く。
「アカウントを配ったが、使っているのは一部のヘビーユーザーだけ」「RAGを作ったが回答精度が低すぎて使わなくなった」――。組織で生成AIの導入を進めるDX担当者なら、一度は頭を悩ませたことがある課題だろう。
福岡県北部に位置する人口約5万4000人の直方(のおがた)市も、その「生成AI活用の壁」にぶつかっている自治体の一つだ。
同市は2030年度までに生成AIにより「年間3万5000時間の業務時間削減」という目標を掲げ、生成AIを全職員へ導入した。しかし「利用者数の伸び悩み」や「ヘビーユーザーとそれ以外の職員の利用頻度の二極化」といった、多くの組織に共通する課題に直面している。
直方市の生成AI活用の現状と課題に迫る。
本記事は、日本DX大賞実行委員会が主催したイベント「日本DX大賞2026 サミット&アワード」(7月22〜23日開催)のラウンドテーブル「生成AIで市役所の仕事はどう変わるか〜都城市・直方市に学ぶ、業務効率化の先にある行政サービスの向上〜」を取材したもの。
守りのDXでは終わらない 直方市が目指す「行政サービスの変革」
直方市がDXに取り組む目的は大きく2つある。1つは社会のデジタル化への適応という「守りのDX」。そしてもう1つが、同市が最も重視する「行政サービスの質の向上」だ。市民にとってより価値のある行政サービスを実現することを目指している。
2021年度から組織的なDX推進を開始し、基盤整備などのフェーズを経てきた同市は、2026年度以降を「定着・高度化」のフェーズと位置付ける。その中核を担うのが、重点取り組み事項として本格展開が始まった生成AIの活用だ。
利用者数は半年で2倍 生成AI定着に向けた地道な工夫とは
直方市は総合計画において「生成AIを活用し、2030年度に年間3万5000時間の業務時間削減を達成する」というKPIを定めている。これは先進自治体の実績を直方市の職員数に当てはめて算出した、現実的な目標だ。
全庁への展開は計画的に進めてきた。2023年度の自主研究グループ発足を経て、2025年10月には自治体向け生成AIサービス「自治体AI zevo」を導入した。zevoは、地方自治体の専用ネットワーク環境からChatGPT、Claude、Geminiなどの生成AIを使用できる仕組みだ。
普及にあたり全庁向け説明会を5回開催したほか、新規採用職員や業務別説明会など、対象に応じた研修を実施し、実務での活用を後押しした。
「しかし、一通りの説明会を終えた2025年12月、AIの利用状況は一時的に落ち込みました」と庁内のDX推進を担う品川将志氏は振り返る。
そこで品川氏らは、庁内イントラネットを活用し、生成AIのTips(活用のヒント)や注意点を定期配信した。特に「活用を様子見している」マジョリティ層に対し「FAQの作り方」「使える(生成AI)モデルと特徴」「よくある質問ベスト3」など、切り口を変えながら繰り返し情報を届けた結果、直近では利用者数が過去最高を更新する月が続いている。2026年1月の利用者数が86人に対して6月は181人と、半年で倍増した。
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