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一時は“倒産寸前”だったのに――元ネジ製造の町工場で、1人の採用枠に「350人」が殺到する理由(1/3 ページ)

1人の求人に350人が応募する町工場。その背景には、一見バラバラな6事業を結び付ける独自の経営戦略があった。友安製作所の事業シナジーと組織づくりを探る。

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 1948年創業、大阪府八尾市にある友安製作所は、ネジ製造の町工場からスタートした。高度経済成長期には洋間の普及に合わせて金属製カーテンフックの製造で成長したが、その後プラスチック製品の台頭により需要は激減。一時は会社の存続すら危ぶまれる“限界町工場”の状態だった。

 3代目の友安啓則社長は、製造業を2000年代前半に一度休止し、インテリア商材の輸入とEC事業を開始する。そこから事業は次々と広がり、今やEC事業をはじめ「カフェ」「工務店」「メディア」「レンタルスペース」「まちづくり」の6事業を主軸としている。

 多角的な事業展開を進め、従業員約190人を抱えるまでに急成長を遂げた。中小企業は人材獲得に課題を抱えがちだが、1人の求人枠に、350人の応募が集まったこともあるという。

 一見、バラバラに見える事業を展開する同社だが、単に事業を広げたのではない。各事業がつながり、相互に補完し合うビジネスモデルを完成させている。

 友安製作所が仕掛ける事業シナジーと、それを支える人材戦略を聞いた。

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友安製作所 代表取締役CEO 友安啓則氏(編集部撮影)

一見バラバラな6事業 全てをつなぐビジョン

 友安製作所の事業展開の根底にあるのは「Add Colors to everyone's Life.」というミッション・ビジョン(ミッションは「世界中の人々の人生に彩りを。」、ビジョンは「世界中の人々の人生の一部に、わたしたちの製品・サービスを。」)だ。

 展開している6つの事業は、それぞれが独立しているように見えて、実は全てこの理念のもとに有機的なつながりを持っている。

 同社が展開する主要6事業の概要は以下の通りだ。

EC事業

 同社の売り上げの柱。海外から輸入したインテリア商材の直接販売からスタートし、現在では4万点以上の商品を扱うまでに成長している。

カフェ事業

 「ECだけでなくオフラインの接点を作りたい」という思いからスタート。店内は商品として取り扱っているインテリアで彩られており、値札も付いている。来店客は飲食を楽しみながら、実際の空間でインテリアを体験し、購入できる。

工務店事業

 インテリアのDIYを推奨する中で生まれた「プロに任せたい」というニーズに応える事業。空間提案からフルリノベーションまでを一貫して手掛ける。自社のインテリア商材や施工技術を生かした空間づくりを行う。

メディア事業

 オウンドメディア『Ttimes』や、大手企業など約150社が参画する「ホームパーティー推進委員会」などのエコシステムを運営する。ホームパーティー推進委員会は、ホームパーティーを日本の文化として定着させることを目指して活動している。

レンタルスペース事業

 レンタルスペースの検索予約ポータルサイト「カシカシ」を運営し、月間約5万人が利用するまでに成長している。

まちづくり事業

 行政や企業へのコンサルティング、起業塾・経営塾の運営、クリエイターと地元企業のマッチング支援などを通して、地域ブランディングやまちづくりに貢献する。

 これら6事業を支えているのが、7年ほど前に復活させた「ものづくり」(製造事業)だ。創業から培ってきた鉄加工の技術と、社内のデザイナーの力を掛け合わせることで、建具や特注家具を自社で製造。売り上げの約10%を占めるまでに成長している。

 一見すると脈絡のない事業展開に見えるが、友安社長はこれを「COLORS CIRCLE」(カラーズサークル)と名付けた一つの循環型経済圏として機能させている。

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友安製作所の6つの事業(出所:友安製作所公式Webサイト)

顧客が「循環」する 友安製作所の“経済圏”

 各事業のシナジーの出発点は「潜在需要の掘り起こし」だ。人口減少でインテリア市場が縮小する中、同社はメディア事業のホームパーティー推進委員会を通じ「家へ人を招く=部屋をきれいにする」という機会を創出している。これにより、生活者がインテリアに関心を持つきっかけを意図的に生み出している。

 また、メディアやSNS、イベントなどで同社を知った顧客は、気軽に立ち寄れる「カフェ」へと足を運ぶ。カフェで魅力的な空間や家具を体験した顧客の中に「自宅やオフィスもこの空間のようにしたい」というニーズが生まれ、工務店事業のリノベーション工事の受注や、EC事業で取り扱っているインテリアの購入につながる。

 レンタルスペース事業のカシカシに登録するオーナーたちは物件を複数所有するケースも多く、インテリアの潜在顧客となる。同社はオーナーに対して自社ECで使えるクーポンなどを送付し、EC事業での購買へとつなげている。

 加えてまちづくり事業は、地域の企業や行政との強固なネットワークを生み出し、オフィスや工場のリノベーションといったBtoB案件を工務店事業へ呼び込む。工事の際は、自社で製造した建具や特注家具も採用される。

 このように、顧客獲得から施工、スペース活用、そしてECでの購買に至るまで、顧客との接点が一連の流れとしてつながっている。企画から開発、製造、発信、販売、施工までを内製化し、自社で一貫して担っているからこそ、ブランドの世界観を損なうこともない。

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本社隣にあるカフェ「Factory Cafe CO-BA by TOMOYASU SEISAKUSYO」の店内の様子(編集部撮影)

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