「1個80円のフックが売れるか」と一蹴された町工場の逆転劇 友安製作所が考える「勝てる製造業」の条件(3/3 ページ)
一度はものづくりをやめた町工場が、世界的デザイン賞を受賞。その裏には「作る力」と「売る力」を融合させた、製造業の新たな勝ち筋があった。
世界的デザイン賞を受賞へ導いた「作る力」と「売る力」
2025年、世界最大級のデザイン賞「iF デザインアワード」において、自社開発の掃除道具シリーズ「BRUSHUP」が最高賞の金賞を受賞した。
友安社長はこの受賞を、長年培ってきた製造の力はもちろん、マーケティングや広報活動も含めた組織力によるものだと話す。
「日本の製造業には、世界に誇れる素晴らしい技術を持つ会社がたくさんあります。しかし、その多くが『売り方』や『情報発信の仕方』を知らないがために埋もれてしまっています」
一度製造業を離れ、ECで売ることに特化した自分たちだからこそ、日本の製造業に貢献できることがあるのではないか――そう考え、友安社長は地域一体型のオープンファクトリーイベント「FactorISM」(ファクトリズム)の実行委員長を務めるなど、自社にとどまらない活動を積極的に進めている。
ファクトリズムは、参画企業が特定の日に工場を一般開放するイベントだ。現在は100社以上が参画している。
「オープンファクトリーを勧めると、多くの企業が『うちの工場は見ても面白くないから……』と言います。でも、来場者は『すごい!』と楽しそうに見学している。それを見ると工場で働く職人も、自分の仕事に誇りを持てるようになります」
また、見学者にとっても、自分たちが日々「かっこいい」「かわいい」「便利だ」と思っている“もの”が、どのように生まれているかを知ることは、製造業への見方を変えるきっかけになるのではないかと話す。
「工芸は守られる。でも工業は守られない」 日本のものづくりの未来
友安社長は、すでに次の未来を見据えている。
国による保護制度が手厚い「伝統工芸」に対し、地域経済を支える一般的な「工業」には限られた公的支援制度しかない。技術が廃れることを防ぐため、同社は2026年11月、ものづくり企業を対象とした新しいサービスを開始する予定だ。
「工芸は助けてもらえるけど、工業は誰も助けてくれない。ならば自分たちで変革するしかない。個の力には限界があります。しかし『集の力』になれば、状況は変えられます。売る力を持つ僕らが基盤を作ることで、全国のものづくり企業のよりどころになれればと考えています」
一度は製造業を離れ、泥臭く「売る力」を磨き上げた友安製作所。その歩みは、自社の成功にとどまらない。「作る力」と「売る力」を結び付けることが、日本のものづくりの新たな可能性を切り開くヒントになるのかもしれない。
ダイハツ、旭化成、NOT A HOTELなど登壇:
無料セミナー「ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏」開催!
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
- 開催日:7月8日(水)〜8月5日(水)
- 形式:オンラインセミナー
- 参加費:無料
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
一時は“倒産寸前”だったのに――元ネジ製造の町工場で、1人の採用枠に「350人」が殺到する理由
1人の求人に350人が応募する町工場。その背景には、一見バラバラな6事業を結び付ける独自の経営戦略があった。友安製作所の事業シナジーと組織づくりを探る。
「今日の注文はフライパン1枚だけ」 毎月「500万円の赤字」だった町工場が、年商6.8億円へV字回復できたワケ
毎月500万円の赤字を抱え「1日の注文がフライパン1枚だけ」という日もあった町工場が、世界22カ国で製品を販売するブランドへと成長した。藤田金属のV字回復を支えた経営改革に迫る。
「給料、自分で決めていいよ」 組織図も稟議もない老舗石鹸メーカーが、管理ナシで成果を出せる理由
社員が自ら希望する給与額を会社に提示する――。そんな「自己申告型給与制度」を導入する老舗メーカーがある。組織図も職種定義書もなく、それでも高い生産性を維持する木村石鹸工業の組織づくりから、人事評価の新たなヒントを探る。


