「売上増なのに資金がない」 創業105年、老舗納豆メーカーの危機を救ったAI時代の資金調達:AIが変える“カネを貸す”条件(2/2 ページ)
決算情報の少なさや少額融資の採算性など、中小企業の資金調達には構造的な壁がある。その課題を変えつつあるのがAIをはじめとするテクノロジーの活用だ。多様な資金ニーズに応える、新たな選択肢が広がり始めている。
AI審査が実現したスピードと少額対応
資金の「ズレ」と「突発的支出」を埋める存在として、稲葉社長はOLTAが提供するオンライン完結型のファクタリングサービス「クラウドファクタリング」を活用している。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(請求書)を期日前に売却し、現金化する資金調達手段だ。
請求書を活用したファクタリングであっても、資金を提供する側は売掛債権や利用企業などを審査する必要がある。その与信判断を支えているのがAIだ。
OLTAのクラウドファクタリングでは、申込情報、財務データ、口座情報などをもとに、独自のAIスコアリングモデルが与信判断を補助している。AIによるスコア算出と、人が非定型的なリスク要因を見極める審査を組み合わせることで、素早い審査体制を構築しているのだ。
AIによる与信審査がもたらすメリットは大きい。必要書類がそろえば1営業日以内に審査結果が出る「スピード」、オペレーション効率化により競争力のある手数料水準を保つ「コスト抑制」、そして、対面型審査では採算が難しかった数十万〜数百万円の「少額案件への対応」を可能にした。AIが従来の人手による審査コストを下げることで、手が届きにくかった領域をカバーしている。
資金調達は"一つの手法に頼らない"時代へ
「AIはすごいよね。もっと進化していくんでしょうね」と稲葉社長。一方で「借りたものはきちんと返す。その積み重ねが信用につながる」と、信用を得ることの重みも決して忘れない。
現在、稲葉納豆工業所では、まとまった金額が必要な場合は銀行融資、仕入れが先行することによる資金のズレや機械故障などの突発的少額ニーズにはクラウドファクタリングと、使い分けを実践している。
「会社を持続的に守るためにも、資金調達の選択肢はいくつか持っていた方がいい」(稲葉社長)
潤沢なキャッシュや高度な財務体制を持ちづらい中小企業にとって「資金調達の手段を複数持つこと」は、成長機会の損失を防ぐ大きな支えとなる。そして、AIをはじめとするテクノロジーの進化が、企業の資金調達の選択肢を広げつつある。
特集「AIが変える“カネを貸す”条件」
AIやデータの活用により、金融機関の融資や与信判断の在り方が変化し始めている。金融機関はこれまで、財務諸表などの定量データをベースに膨大な時間をかけて審査をしていた。しかし生成AIの普及により審査業務が効率化され、短期間・少額の融資やデータ駆動型のデット調達(ベンチャーデットなど)が広がりつつある。
従来は融資を受けにくかった中小企業やスタートアップが、資金調達しやすい環境が整い始めた。特集では、取材を通じて、AI時代の「カネを貸す条件」について考えていく。
第2回:早大教授に聞く AIが発展するほど「経営者の資質」が問われるワケ
第3回:稲葉納豆工業所の資金調達の裏側(本記事)
第4回(予定):Zehitomoが引き出したデータ駆動型融資
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