サツドラ、クーポン配布で「数十億円の売り上げ効果」 アプリ会員「145万人」達成で見据える、真の顧客理解(3/3 ページ)
北海道を中心に店舗を構え、道民から支持を得ているドラッグストア「サツドラ」。同社は公式アプリを軸としたリテールメディア戦略を推進している。「サツドラ公式アプリ」のダウンロード数は現在145万件を誇り、アプリを軸としたマルチチャネルでクーポン施策を実行したところ、その売り上げインパクトは既に数十億円規模に上る。
AIで「1人のマーケターができること」が増えた
「キャンペーンを実施する際は、店頭サイネージとアプリを連動させて、マルチチャネルでアプローチした方が、コンバージョン率は高まります」と坂本氏。
複数のチャネルを活用しながら、複数のセグメントに異なるクーポンを配布──マーケターの負担は大きくなるのではないか。
同社はカスタマエンゲージメントプラットフォーム「Braze」を活用し、施策の作り込みや改善をスピーディーに実行しているという。
「今作成している施策やキャンペーンの場合、どの通知方法がベストか、文章はこれでいいのかなどを全てBrazeのAIオペレーター機能に聞きながら、対応しています。他にもエラーが起きた際は、これまでは該当の資料を探し、それからサポートに相談……と時間を要していましたが、オペレーター機能でスピードが格段に上がりました」(OMO本部 マーケティング部 マーケティング担当 畑中まみな氏)
これまではSQL(Structured Query Language:構造化問い合わせ言語)の知識がないとできなかった業務も、ツールを活用することで、担える人材が増えた。組織の人数は同じでも、AI活用によって各業務に対応できる人が増え、全体のスピード感が底上げされているという。
業務のスピードが上がり、さまざまな施策にトライしやすい環境ができている。
坂本氏が重視するのは、分からないことがあったらすぐに試してみることだ。
「『同じようなLTVのユーザーは購入してくれるのに、このユーザーはなぜ買ってくれないのだろう』ということがデータから見えたとき、まずは一回試してみる。(施策を)やる前に考えて、結局何も行動せず、進行が遅れてしまうよりは、思い立ったらすぐにやってみるというケースが多いですね。それを繰り返して、施策の精度を高めている感じです」(坂本氏)
動画も強化 全て視聴でクーポン配布
現在同社は、サイバーエージェントと連携し、動画を活用した販促にも力を入れている。
アプリ内で商品の魅力を伝える動画を配信。顧客が動画を全編視聴した後に、クーポンを配布している。サイバーエージェントのプレスリリースによると、2025年6月に実施した先行プロモーションでは、動画視聴完了後に配布したクーポンの利用者のうち、最大で95%が対象商品の新規購入者となるなど、高い販促効果を確認したという。
屋外広告や店頭でのPOP、サイネージでは、顧客が広告を見たか、動画の場合は最後まで見たかを把握しきれない。
「アプリは視認率がすごく高いため、価値を感じていただけています。さらに動画視聴後にクーポンを出すので、実際に動画を見た方が購入したかまで、しっかりトラッキング、分析ができます」(坂本氏)
動画施策の場合、クーポンの配布数は減る。顧客であるメーカー企業によって異なるニーズに対し、同社は動画広告の価値を高めるため、コンテンツ方針を調整していく考えだ。
「動画を見てクーポンを獲得したユーザーの方がLTVが高いのか、クーポン利用率が高いのか。それとも、もともと使っていた商品から広告を見た商品に買い替えているのか──。そういった深い分析をして、価値として提示をしていかなければなりません」(坂本氏)
今後の展望について、プラットフォーマーとの連携を挙げた。個人情報を安全に管理できる状態で、同社が保有するデータを使える仕組みを作っていきたいと話す。「サードパーティー側と組み、北海道の課題解決型メディアのような立ち位置を目指していければ。自分たちのアセットのみではなく、他社とのコラボレーションもしながら、メディアとしての価値を出していくことも、いろいろ検討しています」(坂本氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「オンラインだけではAmazonに勝てない」 セブンがアプリで広告を配信する狙い
セブン‐イレブン・ジャパンはリテールメディアに本格参入した。「小売りを手掛けるセブン&アイが広告を売る」、その仕組みはどうなっているのか。Amazonに勝つための、小売りならではの強みとは?
「ファミチキ×コーラ」の併売が7倍に! リテールメディアの真価と残る課題は
ファミリーマートと日本コカ・コーラ社がタッグを組み、リテールメディア活用に力を入れている。2023年4〜5月に実施したキャンペーンでは「ファミチキ×コーラ」の併売が7倍に。広告主から見たリテールメディアの真価と残る課題とは……。
ワークマンのアプリが「あえてデータを取らない」理由 「地に落ちた顧客満足度」を引き上げられるか
「地に落ちた顧客満足度の向上を目指す」──9月1日、ワークマンの土屋哲雄専務のコメントが注目を集めた。既存・新規顧客両方に課題を感じる中で、低下気味だった顧客満足度を引き上げるために、公式アプリの提供を開始した。この公式アプリにおいて、ワークマンは「顧客データの取得」や「ECへの送客」をKPIに置いていない。
ファイターズの“熱狂を逃さない”データマーケティング エスコンフィールドに顧客が「試合+1.5時間」も滞在するワケ
「エスコンフィールドHOKKAIDO」の2025年の観客動員数は、459万人(前年比10%増)と過去最高を記録した。会場では、観客が試合開始よりも早く来場したり、試合後に次回の来場の予定を立てたりする裏で、同社が公式アプリをはじめとする“デジタルの接点”で仕掛ける、さまざまな施策が見えてきた。
小売マーケの限界突破か サツドラ、AIカメラ×広告で売上が1.6倍に
北海道内で2位の店舗数を誇るサッポロドラッグストアは、新しい店舗体験の構築に乗り出した。AIカメラでの取得データとPOSデータを掛け合わせた広告を展開している、新しいチャレンジを取材した。
「それ効果あるの?」と言わせない! 三田製麺マーケターの“社内を納得させる”施策効果の可視化術
「SNSのフォロワー数は増えているのに、売り上げへの貢献が見えない」「オンライン施策と店舗集客の関係性が分からない」――。多くの広報・マーケティング担当者が、一度は直撃したことがある課題だろう。そんな中、つけ麺チェーン「三田製麺所」を運営するエムピーキッチンホールディングスは、SNSやWebを活用した認知拡大から、コアファンの育成、そして売り上げ貢献までを可視化する独自のロジックを確立した。

