「一番忙しい時期に辞めてやる」――なぜ社員は最後に“暴走”するのか? リベンジ退職を起こす真犯人とは(1/3 ページ)
「リベンジ退職」は急増したわけではない。低頻度・高影響なリスクに監視強化は逆効果となる。企業が本当に打つべき実務的な対策と、見直すべき組織の課題とは?
「リベンジ退職」という言葉が、たびたび話題になっている。
繁忙期に突然辞める、データを削除する、SNSで内情を暴露する――。
このように、職場への報復を目的とした退職スタイルを指す言葉だ。人事系メディアでも対策記事が目立ち、「リベンジ退職が増加している」という印象を受けやすい。
しかし、公的統計に目を向けると、離職率自体はむしろ減少傾向にある。また、筆者の経験上、こうした「報復的な辞め方」をする人は、かなり以前から一定数存在していた。
では、なぜ今になって注目を集めているのだろうか。そして、その実態はどのように変わってきたのだろうか。この点をひも解くことこそが、問題の本質や有効な対策を見いだすヒントになる。
違法性が認められても、損害は戻らない
退職時に会社のデータを消去する、機密情報を持ち出す。こうした明らかな違法行為の責任は、当然ながら実行した本人にある。動機がどれほど切実であろうと、職場環境にどれほど問題があろうと、違法行為は一線を越えている。いかなる背景も免責の理由にはならない。
実際に、退職時の報復行為をめぐる裁判の判例が存在する。2025年1月、徳島地裁は退職時に共有サーバーのデータを削除した元従業員に対し、「バックアップを取っていなかった会社にも落ち度がある」という主張を退け、過失相殺を認めない判決を下した。
リベンジ退職に違法性があれば、退職者へ法的責任を追及することは可能だ。しかし、一度損なわれた重要なデータが元通りに戻るとは限らない。
リベンジ退職は以前から起きていた
「リベンジ退職は以前から起きていた」という見解を裏付ける研究が存在する。
1995年、米国の研究者が「会社や上司への仕返し」に相当する行動を45種類抽出し、発生状況を測定する質問票を作成した。こうした調査が行われたこと自体、当時すでに「報復行為」が問題として認識されていたことを示している。1997年にも、製造業の従業員240人を対象に「組織的報復行動」を測定する研究が実施されている。
退職が決まれば、もはや会社からの評価を気にする必要はない。そのため、退職時は、これまでため込んだ鬱憤(うっぷん)を晴らす機会になり得る。そう考えて行動する人物は、昔から一定数存在していたのだ。
では、なぜ近年になって急激に注目されるようになったのだろうか。
「リベンジ退職」とは、米国の求人口コミサイト「Glassdoor」が2024年11月に公表した年次トレンドレポートで生み出された造語だ。翌12月には日本にも紹介され、徐々に言葉が浸透していった。つまり、報復的な退職が急増したというより、既に存在していた行動に「リベンジ退職」という名前が付いたことで、注目を集めるようになったと考えられる。
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