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「一番忙しい時期に辞めてやる」――なぜ社員は最後に“暴走”するのか? リベンジ退職を起こす真犯人とは(2/3 ページ)

「リベンジ退職」は急増したわけではない。低頻度・高影響なリスクに監視強化は逆効果となる。企業が本当に打つべき実務的な対策と、見直すべき組織の課題とは?

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消えなくなった「報復行為」の証拠

 かつては、腹いせに書類を持ち出すような社員がいたとしても、「誰が・いつ・何を」持ち出したのか、明確な証拠を示せないケースが多かった。しかし、デジタル化が進んだ現在では状況が異なる。前述した日亜化学工業の事例では、詳細なデジタル上の記録(ログ)が残されていた。

 当該の元従業員は退職日にデータを削除するプログラムを作成し、自宅からリモート接続して起動させる設定を行っていた。しかし、プログラムの作成日時やアクセスログ、削除されたフォルダ数に至るまで、詳細な記録が残っていた。

 その結果、残された記録に基づいて再開発費用などが明確に算定され、一審で約577万円、控訴審では開発関連レンズの再購入費用が加算され、約1040万円の損害賠償支払いが命じられた。

 さらに刑事事件としても、2024年12月の家宅捜索、2025年11月の逮捕を経て、2026年6月には電子計算機損壊等業務妨害罪で起訴され、公判が続いている。

 このように、現代の「リベンジ退職」に伴う違法行為は、デジタル技術によって極めて可視化されやすくなっている。

リベンジ退職のリスクは「低頻度・高影響」

 リベンジ退職はリスク管理上、典型的な「低頻度・高影響型リスク」に分類される。

 国内の定量調査としては、組織コンサルティング会社のスコラ・コンサルト(東京都品川区)が2025年に一般社員・管理職2106人を対象に実施した調査がある。これによると、11.8%が「リベンジ退職」を経験した(上司・同僚・部下の行為を見聞きした)と回答している。発生頻度は決して高くないものの、前述した判例が示す通り、ひとたび発生した場合の1件当たりの損害・影響は極めて巨大だ。

 こうした低頻度・高影響のリスクに対して、発生確率そのものを下げようとする対策はあまり意味をなさない。「危険そうな人物」を特定しようとすればするほど誤検知が増え、過剰な規律(オーバーコンプライアンス)に陥る。監視の強化はかえって職場の雰囲気を悪化させ、逆効果となりかねない。必要なのは、発生した際の影響を極力抑えるための実務的なリスク軽減策だ。


厳しいルールは職場の雰囲気を悪化させかねない

 例えば先述した日亜化学工業の事案は、最終出社日から正式な退職日までの間に発生しており、データの復元可能期間は40日、事件の発覚は約2カ月後だった。最終出社日の時点でリモートアクセス権限を停止していれば実行自体を未然に防げたうえ、バックアップの保持期間を発覚までの期間以上に設定していれば、損害の大部分は回避できたはずだ。いずれもシステムや運用の設定見直しだけで十分に予防可能な領域といえる。

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