なぜ今、日本型「長期雇用」が世界で再評価されているのか 大転職時代の米国が抱えた“人材のトラウマ”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
「ビッグステイ」(The Big Stay)なる言葉が米国で話題です。日本企業が手放した「長くとどまることで得られる果実」が、今やグローバルな再評価の波に乗って、原点回帰の様相を呈しているのです。
リスキリングは「未来の雇用」のためのもの
リスキリングとは、Reskillingという英単語で見れば分かる通り、職業技能の再教育、再開発(reskill)を意味しています。日本では「働く人の自主的な学び直し」という個人の自己責任論やスキルアップの文脈で捉えがちですが、Reskillingは単なる学習の手段ではなく、結果につながるものである点が、大いに異なります。
つまり、リスキリングは「未来の雇用」のためのものであり「新しい価値」を生むための、企業全体の取り組みです。経営者のきちんとした「経営戦略」のもと、一部の社員ではなく、新人から経営サイドまでの全人材に対してリスキリングが行われて初めて意味を持ちます。技能だけでなく、適応力、コミュニケーション能力、さまざまな企業や人たちと協働する能力、新しい仕事を創造する能力を強化する「わが社の一員であるメンバーへの投資」です。
もともとは2019年にILO(国際労働機関)の「仕事の未来世界委員会」が公表した報告書において「現在のスキルは未来の雇用とマッチせず、新たに獲得されるスキルも迅速に陳腐化する恐れがある」と警鐘を鳴らしたことに端を発しています。
ILOは2019年6月の第108回総会で「2019年の仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を採択し、政府や企業などが働く人たちの職業訓練に投資することを加盟国に呼びかけてきました。2013年に、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによって発表された論文「雇用の未来〜コンピュータ化によって仕事は失われるのか〜」で、20年後までに人類の仕事の約50%が人工知能ないしは機械によって代替され消滅すると予測されていたので、メディアの関心も高まりました。
さらに、世界経済フォーラムと米Boston Consulting Group(BCG)が、米国におけるリスキリングのコストは1人当たり約2万4800ドルで、社外から採用するよりコストを6分の1程度に抑えられるという報告書を出したことで、多くの企業がリスキリングを取り入れるようになったとされています。この試算にはさまざまな意見がありますが、リスキリングで社内投資した方が、社外から採用するより圧倒的に安いという点では一致しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
慕われる“雑談おじさん”を切り捨てた企業の末路 ギスギス職場を救う「見えない貢献」の正体
かつて日本の職場には、仕事をしているのかいないのか分からないけれど、なぜか周囲に慕われる「潤滑油」のような先輩や上司がいました。今、こうした人々の「目に見えない貢献」が、再び脚光を浴びています。
顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?
米国で最近、「Coffee badging」という働き方が流行っています。出社後、コーヒー1杯で帰ってリモートワークをするというものです。
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない
上司と部下の1on1ミーティングを実施する企業が増えています。「若手社員のために!」と経営層や人事が意気込むものの、現場からは戸惑いの声も……。なぜ、日本企業では1on1がうまく機能しないのでしょうか。
給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題
「給料は変わらないのに、仕事だけが増え続けている」「役職は変わらないのに、後輩の育成がタスクに加えられた」といったような相談がこの数年で増えています。年齢は30代がほとんどです。ひょっとすると、あなたも似たような状況に陥っていませんか?
