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酷暑による経済損失「年7.8兆円」 “暑さ”を商機に変えた「空調服」「ダイキン」の戦略に迫る古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

40度以上の酷暑日が当たり前にある日本。暑さは経済に深刻なダメージを及ぼしている。一方で、暑さを味方に付けてビジネスを拡大しているのが「株式会社空調服」と「ダイキン」だ。両社の戦略に迫る。

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筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 「酷暑日」――気象庁が4月17日に発表した、最高気温が40度以上の日を指す名称だ。同庁によると、2026年に酷暑日を観測した地点は8月3日時点で延べ34地点に達し、2010年以降で最多となった。

 2025年の酷暑日は延べ30地点で、8月上旬ですでに上回っている。東海地方では、5日連続で酷暑日となり国内初を記録。九州でも観測史上初の40度超えが出た。

 しかし、日本の「仕事環境」「労働に関する規則」の多くは温帯の気候を前提に組み立てられている。この暑さを受けて多額の経済的損失が出ているという調査結果がある一方で、暑さを商機に変えている企業がある――ファン付きウェアを手掛ける「株式会社空調服」と、空調大手のダイキン工業(以下、ダイキン)だ。

 酷暑日が常態化した日本で、あるいは常夏といわれるような世界の国・地域で、どのようなビジネスチャンスを見いだしているのか。

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最高気温が40度以上の日を酷暑日と呼ぶ(画像:ゲッティイメージズ)

酷暑による経済損失「年7.8兆円」 “暑さ”は災害か、商機か

 まず前提を確認したい。暑さによる経済損失は、すでに世界的な課題として実測値に表れている。

 英国の医学誌『The Lancet』が世界保健機関(WHO)と共同でまとめた気候変動レポート「Lancet Countdown」の2025年版によれば、暑熱によって年間約6400億時間の労働時間が喪失し、それにより約1兆900億ドル分の経済的損失に達したという(2024年時点)。

 日本の数字はさらに具体的だ。同レポートの日本に特化した分析部分を確認すると、暑熱による所得損失は2024年に約494億2000万ドルに達していた。1ドル=158円で換算すれば約7兆8000億円となる。

 喪失した労働時間の推計は約14億2000万時間であり、労働者1人当たりで換算すると年43時間になる。1990年代比でほぼ倍増しているという。

 将来推計もある。ドイツの保険会社Allianzが2026年5月に公表した分析では、2026〜2030年で猛暑による日本のGDP損失額が累計3540億ドルとなり、主要国で最大となると推計している。これは、フランスの2400億ドル、イタリアの1470億ドル、ドイツの1310億ドルを大きく上回る。

 同分析は、気温が30〜35度にあるとき、1度上がるごとに1時間当たりの生産量が、2014〜2024年までの平均から約3%低下すると指摘。損失が急拡大する臨界点が、30度前後だとしている。

 日本企業も、猛暑の悪影響を実感している。帝国データバンクが2026年7月に公表した調査によれば、猛暑によって業務に支障が出ていると答えた企業は50.0%。業種別では建設業73.6%、農林水産業66.7%、運輸・倉庫業54.7%だった。

 気温上昇は認知能力と身体能力を同時に削る。工期は延び、ミスは増え、離職は進む。だがそれらは「暑さのせい」として計上されない。高齢化した労働力、空調に依存した現場環境なども影響しているだろう。日本企業が長らく「夏場は仕方ない」と処理してきた負荷は、損益計算書に載らない隠れたコストとして積み上がっているのだ。

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最高気温が35〜40度を超える顕著な高温を記録した日に、業務に支障が出たかどうか調査した結果(出所:帝国データバンクのレポート

「着る空調」が好調 ファン付き作業着メーカーの売上高は過去最高に

 暑い環境で普及が進んだのが「ファン付き作業着」である。

 電動ファン付きウェア(EFウェア)の国内市場は、メーカー出荷金額ベースで2024年に約200億円を突破し、2025年には約300億円の大台に乗った(繊維ニュース調べ。調査1調査2)。同市場の草分けである「株式会社空調服」は、2025年12月期の売上高が約85億円で前期比7割増となり過去最高を記録したことが分かった

 企業が労務リスクを下げるために調達する装備を軸に、法人向けの暑さ対策市場が拡大している。ワークウェアメーカーやアパレル企業などの参入も相次いでおり、市場がホットな状態だ。

photophoto ファン付きウェアの「空調服」(出所:空調服のプレスリリース

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