「寝ホン」はなぜ人気? Ankerとfinalが睡眠用イヤフォンに注力するワケ(5/5 ページ)
「寝ホン」と呼ばれる「睡眠用イヤフォン」の人気が拡大している。Ankerは、ノイズキャンセリングやいびきマスキング機能を搭載して人気を集める。一方、50年以上の歴史を持つオーディオブランドfinalは、入眠に特化した滑らかな音質が支持されている。なぜ、同市場が盛り上がっているのか。
最新製品も想定を上回る反響
「ZE500 for ASMR」は、片耳約3グラムとCOTSUBUより二回りほど小さくし、耳に触れる部分を柔らかいシリコンで覆うデザインに変更。さらに、挿入した際の深度を浅くすることで異物感を抑え、寝心地の良さを追求した。連続再生時間はイヤフォン単体で最大4.5時間と短いが、際立った小ささと、近接感のある「声」に特化した音質を両立させた。
「『入眠時やASMRに適している』とうたったところ、ECサイトやロードサイドの家電量販店でよく売れています。実際に音楽やラジオ、オーディオブックなどを就寝時に聞いている方が多くいます」(ファイナル 森氏)
2021年発売の「COTSUBU for ASMR」と、2025年以降に発売された「ZE500」シリーズ(最新製品の「NYUMIN」を除く)を合わせ、累計販売台数は30万台を突破。この反響を受け、さらに改良した「ZE500 NYUMIN」(希望小売価格1万1800円)も開発した。
「前製品で支持された形状や装着感を踏襲しつつ、『音質』を大きく進化させました。通常、スマートフォンの音量調整は16ステップと決まっていますが、アプリを使えば、より細かく音量を調整できます。入眠時は音の刺激をやわらげる必要があり、心地よいと感じる音量は個人差が大きいためです。通常小さくなるほど聞こえづらくなる低音の声も、ぼやけないよう自動補正を搭載しています」(ファイナル 森氏)
専用アプリでは、タイマーや音の調整、入眠用サウンドなどの機能はあるが、アンカーのA30と比べると明らかにシンプルだ。オーディオマニア以外にも広く普及させたい狙いから機能を絞り、価格を約1万円に抑えたという。さらに、森氏はこう続けた。
「『心地よさ』の観点でも、あえてノイズキャンセリングを搭載しませんでした。同技術は、周囲の雑音を低減するために逆位相の音を出し続ける必要があります。かつ、いびきをマスキングするなら強力なノイズキャンセリングでないと難しく、鼓膜に負荷がかかります。
これらを踏まえ、当社では全体的に音圧を下げることで音の角を取るアプローチを取っています。雑音は消えないけれど気にならないという耳栓のような『緩やかな遮音』を目指しています」(ファイナル 森氏)
同製品はマクアケで想定を上回る金額を集め、好調なスタートを切った。主な購入者は20代後半から40代で、狙い通り従来製品よりも広い層から関心を集めている。また、一般的なオーディオ製品より女性比率が高いという。
2社では「寝ホン市場は広がっていく」との考えから、睡眠用イヤフォンの開発を継続していく方針だ。
著者プロフィール:小林香織
1981年生まれ。エンタメ業界で約10年の勤務後、2016年にフリーライターへ転身。主に「経済(消費トレンド等)」「国内外のイノベーション」「社会課題」を扱う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。海外文化にも興味が強く、東南アジアへの短期移住や2020年から約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。2022年3月からは東京拠点。現在の担当媒体は、「ITmedia ビジネスオンライン」「文春オンライン」「ビジネス+IT」「東洋経済オンライン」など。
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