離職率低下は「定着」か、それとも社員の“諦め”か──「人が辞めない会社」が見逃しがちなリスクとは?(4/4 ページ)
人が辞めないことは、企業にとって歓迎すべきことなのか──。米国で進む人々が会社を辞めない「ビッグステイ」現象を通して、日本のITエンジニア市場で起きている変化を読み解きます。
企業が見るべきは離職率ではなく「残っている理由」
今後、企業は「自社にいる社員はなぜ残っているのか」という問いに向き合わなければなりません。
「仕事にやりがいがあるから」「上司やチームを信頼しているから」「報酬や評価に納得しているから」「他に良い求人がないから」「転職活動に自信がないから」──このように「在籍している」という状態は同じでも、背景にどんな理由が存在するのかは人それぞれです。
企業は、下記のような点を定期的に把握し、在籍している社員がより良い状態で長く働き続けるために何を行うべきか整理する必要があります。
- 現在の仕事に成長実感があるか
- 3年後のキャリアを社内で描けるか
- 評価や報酬に納得しているか
- 他社から同等以上の条件を提示されたら転職を検討するか
- 今の会社に残る最大の理由は何か
採用についても同様です。即戦力採用だけに偏れば短期的には育成コストを抑えられます。しかし、多くの企業が即戦力採用を目指し続けると、数少ないミドル・シニア層の奪い合いになってしまうでしょう。
- その基準は本当に現在の仕事に必要なのか
- 若手を採らない場合、将来の中核人材をどう確保するのか
- AI時代に、どの能力を社内で育てるのか
目先の採用だけではなく会社としての中長期的な成長を目指すのであれば、上記のような点まで考えなければなりません。
企業が求める経験は高度化し、AIによって役割は変わり、転職できる人とできない人の差は広がっています。その結果として、表面上は人が残っているように見える企業もあるでしょう。
しかし、それを定着の成功と捉えるのは早計です。
企業が目指すべきなのは「人が辞めない会社」ではなく、社員が自分の意思で残る理由を持てる組織です。その理由をつくれないまま、市場環境だけを理由に人が残っている状態を「定着」と呼んでしまえば、静かな退職を見逃し、次に市場が動いたときに初めて問題の大きさに気付くことになりかねません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「AIに代替されないスキル」を持つエンジニアを見抜く方法は? 必ず聞くべき「6つの質問」
生成AIの台頭は、エンジニアリングの現場にとどまらず、エンジニアの採用領域にも影響を及ぼしています。本稿では、企業と求職者の双方の視点から、生成AI時代におけるエンジニア採用について考察していきます。
「スキル」だけでは見抜けない、“デキるPM”をどう選ぶか 企業が実践すべき5つの評価手法
年々深刻化するIT人材不足ですが、近年はAIの台頭やDX需要の高まりにより、上流工程で意思決定を担える人材の不足が一層顕著になってきました。なかでも特に深刻なのが、プロジェクトマネジャーやプロダクトマネジャーといった中間マネジメント層です。
「とりあえず出社」だけを押し付けていないか? “出社回帰”成功企業が実践する3つの共通点
かつてリモートワークを推進していた企業の多くが、次々と「原則出社」へと舵を切り始めています。出社回帰は単なる働き方の見直しにとどまらず、経営戦略の転換や事業の変化、組織の再編など、企業全体に影響を及ぼします。レバテックの最新調査データをもとに、「なぜ今、出社回帰が起きているのか」「企業はこの変化とどう向き合うべきか」を読み解きます。
エンジニア「35歳定年説」はもう古い 引っ張りだこのミドル・シニア層に共通するスキルとは?
かつてエンジニアは「35歳定年説」がささやかれ、40代以降の転職は難しいといわれることも少なくありませんでした。しかし近年、IT転職市場において40〜50代=ミドル・シニア層の転職が活発化しています。なぜ、40代以上のIT人材が求められるのでしょうか。

