AIで変わる「現場」、稼ぐ人材に求められる能力は? 東大名誉教授が説く“仕事のライトブルー化”:変わる『現場リーダー』の条件――ネオ・ブルーカラーの衝撃(1/2 ページ)
AIの進化で、製造・建設などの「現場」の仕事も変わり始めている。AI時代に台頭する「ライトブルー人材」とは何か。また、それにより組織の在り方はどのように変化するのか。
特集「変わる『現場リーダー』の条件――ネオ・ブルーカラーの衝撃」
生成AIの急速な進化は、製造や建設などの「現場」における組織の在り方やリーダー像にも影響を与える可能性がある。AI・DXを前提としたオペレーション改革が進む中、かつての経験重視の評価から、リスキリングでデジタル知識を得た人材や、ビジネススキルと現場知見を兼ね備える「ネオ・ブルーカラー」人材が台頭しつつある。現場を支える人材の多様化に伴い、評価や人事制度はどうあるべきか。特集では、事例や専門家への取材を通じて、これからの「現場リーダーの条件」を考えていく。
第1回:東大名誉教授に聞く「仕事のライトブルー化」(本記事)
第2回(予定):データから見る、生成AIによるキャリア選択への影響
第3回(予定):オーテック
第4回(予定):岡田研磨
生成AIの急速な普及は、ホワイトカラー業務の在り方を揺さぶっている。将来の雇用に不安を抱くオフィスワーカーも見られる中、注目したいのが製造・建設といった現場の最前線へとキャリアをシフトする動きだ。
デスクワーク中心のオフィスワーカーがAIによる代替の危機に直面する一方で、製造業や建設業などの「現場」で働く人々にはどのような影響が生じ得るのか。これからの現場リーダーを担うのは、どんな能力を持った人材なのか。
東京大学名誉教授の藤本隆宏氏への取材から見えてきたのは「仕事のライトブルー化」と「現場サイエンティスト」の台頭だった。
ホワイトカラーとブルーカラーの境界が消える
まず前提として「ホワイトカラー」と「ブルーカラー」という言葉の定義を考えたい。藤本氏は「これらは人材の属性ではなく、仕事(タスク)の分類だ」と指摘する。
ブルーカラー業務とは、体を動かしてモノや環境に働きかける物理的な作業を伴うもの指す。対してホワイトカラー業務とは、データ収集や分析、指示出しなど、情報空間で完結する情報処理の作業だ。
デジタル技術が導入され、自動化が進んだ工場や建設現場を思い浮かべてほしい。現場における1日の作業内容をひも解くと、モニターやメーターで作業が正常に進行しているか確認したり、データの集計や仮説立案をしたり「ホワイトカラー的作業」が大きな割合を占めていることに気付く。一方、異常時の対応や段取り替え(生産ラインにおいて流す製品に合わせて装置などの設定を変更する作業)、改善のための実験など、物理的な「ブルーカラー的作業」も存在する。
「この1日の業務を時系列の帯グラフにし、ホワイト作業を白、ブルー作業を青で塗り分けたとします。すると、白と青が入り交じったそのグラフは、遠目に見れば水色(ライトブルー)に見えるでしょう」(藤本氏)
このような仕事を担う人材を藤本氏は「ライトブルー人材」と呼び、日本の生産現場の多くは、今後こうしたライトブルー職場へと変貌を遂げていくと予測する。
現場で体を動かす「現場アスリート」としての役割を残しつつも、生産工程全体の効率や品質を高めるための仮説検証と実行を回す「現場サイエンティスト」としての仕事が増えていく。「日本のものづくり現場において、従業員、特にリーダークラスの仕事に、こうした仮説検証の仕事が多くなっていく」と藤本氏は話す。
AIに「奪われる現場」と「助けられる現場」
生成AIをはじめとするテクノロジーの進化は、ライトブルー化の流れを促進すると考えられる。生成AIがもたらす雇用的・心理的なインパクトは、純粋なホワイトカラー職場と現場のライトブルー職場とでは異なる。
ホワイトカラーとして分類される、情報空間で完結する仕事は、AIによって大幅に代替される。デスクワーカーの間には「10年後に自分が職場で活躍している姿が想像できない」という不安が広がっている。
一方、ブルーカラーの仕事ではどうだろうか。現場では、異常の検知・警告や原因の推定、改善策の提案などはAIが担えるようになる。しかし、最終的な意思決定や物理空間での機械操作・緊急対応といった「人間が体を動かして実行する局面」は残る。
「現場におけるAIは、人間の仕事を奪うものではなく、人間の意思決定と実行を『補完』し、助けてくれる存在となる。AIやDXを活用することで、むしろ将来の『明るい現場』が想像しやすくなるかもしれない」(藤本氏)
また、これまで日本企業の一部に「本社のホワイトカラーが勝ち組、現場のブルーカラーが負け組」といった潜在意識が存在していたとしたら、今後、大きく覆る可能性があるとも同氏は指摘する。
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