「いきなり!ステーキ」、黒字転換も株価40分の1 ブロンコビリーは最高益、何が違うのか?(3/3 ページ)
「いきなり!ステーキ」と「ブロンコビリー」の業績を比較。安さと急拡大を武器に「記憶の割高感」で苦戦した前者と、体験価値と直営・内製化で高収益を保つ後者を対比し、インフレ下での外食経営の明暗を分析する。
値上げしても客が減らないブロンコビリー
対するブロンコビリーはどうか。ブロンコビリーは、1978年に愛知県名古屋市で創業した、東海地方を基盤に郊外型ロードサイド店舗を展開するステーキ・ハンバーグレストランチェーンである。炭火焼きの肉料理と充実したサラダバーを強みに高収益体制を築いている。
ブロンコビリーで注目すべきは増益の中身だ。
同社は2025年11月に値上げを実施し、2026年4月にサラダバーを「ブロンコビュッフェ」へリニューアル。客数を維持しながらも、客単価を上げることに成功した。
しかしなぜ客が離れないのか。まずは直営主義だ。同社はフランチャイズ展開をせず、全店を直営で運営する。出店速度は年10店前後とペースは決して早くない代わりに、品質統制や店舗人材の教育に力を入れている。
内製化している点も見逃せない。同社は1993年に自社加工工場を開設し、現在は愛知と神奈川の2拠点でステーキ、ハンバーグ、ソース、ドレッシング、ケーキまでを自社製造する。製造から店舗までを握る「製造小売」に近い構造が、原材料高の局面でも粗利を守る緩衝材になっている。
「安さが価値」の店は、値上げの時代に苦境へ
いきなり!ステーキの価値の中核は「安く早くステーキが食べられること」、すなわち価格そのものだった。価格が売りの業態は、インフレで値上げを迫られた瞬間に存在理由が揺らぐ。
一方で、ブロンコビリーの価値の中核は、炭焼きの香りとサラダバーと店の空気、つまり「そこで過ごす時間」にある。価格は価値の一部であるため、値上げしても客は離れにくい。
むしろ値上げで得た原資を商品開発や研究に再投資し、顧客体験をさらに厚くする循環を回している。
ブロンコビリーにも試練はある。
成長の次の一手として西日本への出店を進めるが、これまでの成功が通用した得意エリアを外れた地域だ。ここでも同社のビジネスモデルが通用するかは未知数だ。
直営主義ゆえに出店を急げば、強みである店長育成が追いつかなくなる。同社の快進撃が本物かどうかは、拡大の速度をどこまで我慢できるかで決まる。
最後に一言添えたい。いきなり!ステーキは、今も決して悪いわけではない。300グラムで2920円という価格は、1000円台だった記憶と比べれば確かに高い。だがファミリーレストランや他のステーキ業界を見渡しても、同じ厚みの肉を、この価格で焼いてくれる店はそう多くない。
変わったのは肉の品質ではなく、かつての過剰なブームが植え付けた消費者の記憶(バイアス)ではないか。急激な店舗拡大期に生じたネガティブなイメージが払拭され、そのコストパフォーマンスが正当に再評価されれば、同社が復権する日もきっと遠くないだろう。
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