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JALが「顔パス搭乗」で挑むCX革命 パスポートもスマホも出さない「立ち止まらない旅」(2/4 ページ)

JALと東京国際空港ターミナルは、国際線の乗り継ぎを含むトランジット領域で、世界初となる顔認証「ウォークスルー体験」の実証に成功した。技術の核心は、顧客の超機微データを自社や巨大ITに集中させず顧客のスマホに保持させる「デジタルアイデンティティ」(データ主権)だ。2037年「旅客2倍」に伴う空港の容量限界と人手不足を打破し、航空券から「旅全体のパス」への進化を目指すJALの次世代CX戦略に迫る。

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なぜGAFAや巨大サーバに「データを預けない」のか?

 今回の実証実験を技術的に支え、これまでのITシステムと一線を画す最大のコンセプトが「デジタルアイデンティティ」(データ主権/自己主権型アイデンティティ:SSI)だ。

 これまで多くの企業は「自社のデータベースにできるだけ多くの顧客情報を集約すること」を、囲い込み戦略の基本としてきた。しかしパスポート番号や顔写真といった、極めて秘匿性の高い「超機微個人情報」(センシティブデータ)を一つの企業やプラットフォーマーのサーバに集中管理させるのは、サイバーセキュリティの観点からも、プライバシーの観点からも好ましくない。大規模なシステム障害やサイバー攻撃による漏洩(ろうえい)リスクが常に付きまとうからだ。

 デジタルアイデンティティの有用な点は、データを企業側で抱え込むのではなく「顧客自身の手元」(モバイルウォレット)にのみ暗号化して保持させる点にある。

 渡邊氏は、その仕組みを「お客さまのパスポート情報や生体情報は、JALのサーバに一切保存されません。全て、お客さま自身のスマートフォンのウォレット内に暗号化されたデジタル証明書として保持されます」と説明する。

 「空港を通過する際も、お客さまが『このデータを提示する』と画面上で同意した最低限のデータ(有効期限や氏名など)だけが、その都度、暗号化されて空港システムに送信されます。データの所有権とコントロール権を、完全にお客さま自身の手元に戻すことで、強固なセキュリティと高い透明性を両立できるのです」

 今回のPoCでは、Google ウォレットをはじめとする3種類のモバイルウォレットを用い、どのウォレットを使っても全く同じように相互運用できることを実証した。GAFAのような特定のITプラットフォーマーによるデータ独占を防ぎ、ユーザー主導の分散型社会を形にする「自己主権型」の実装例といえる。

 杉原氏は「巨大なITプラットフォーマーに全てを委ねるのではなく、分散型のデータ主権を構築します。検証可能で信頼できる証明書をデジタル上で自ら所有・管理することは、お客さまの航空手続きの利便性を向上させるだけでなく、社会全体における『個人のトラスト(信頼性)』を高めていくことにもつながります」と力説する。

 「企業がデータを奪う時代」から「顧客がデータをコントロールして利便性を買う時代」へのパラダイムシフトが起こっているのだ。

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デジタルアイデンティティの有用な点は、データを企業側で抱え込むのではなく「顧客自身の手元」(モバイルウォレット)にのみ暗号化して保持させる点にある

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