経費精算「5件に1件が差し戻し」をどう変えた? 丸紅グループが挑む「マニュアルゼロ」の業務改革(2/3 ページ)
ホールディングス化に伴い経費精算システムを刷新した丸紅グループ。規定やマニュアルの策定を進めたが、現場の実態とのギャップによる誤申請や問い合わせの急増が課題となっていた。「マニュアルゼロ・迷いゼロ」を掲げ、経理業務の変革を目指す同社の取り組みに迫る。
差し戻し率「20.7%」がもたらす「3つの悪影響」
この課題はデータにも表れていた。経費精算における「差し戻し率」を計測したところ、業界の上位水準が6.4%であるのに対し、同社は20.7%と約3倍だった。厳格なガバナンス体制をとっている背景があるとはいえ、無視できない数字だ。
差し戻しの多発は、組織に3つの深刻な影響を及ぼす。1つ目は、計上と支払いの遅延リスク増大という「業務の停滞」。2つ目は、不備指摘が連発することで、現場社員に申請業務に対する嫌悪感を抱かせてしまう「心理的抵抗感の定着」。そして3つ目が、経理が形式チェックに追われることで実態審査が困難になる「ガバナンスの有効性の低下」だ。
これらの課題を解決するため、経理部門は詳細なマニュアルを整備したが、状況は好転しなかった。松澤氏はその理由を「マニュアルの限界」と表現する。
「マニュアル上でキーワード検索をしても、正解にたどり着けない『探せない』問題や、操作画面とマニュアルが切り離されているために『活用しづらい』といった問題がありました」(松澤氏)
マニュアルを増やせば増やすほど「どこに書いてあるのか分からない」「探せないので教えてください」という問い合わせが増える悪循環に陥っていたという。
「マニュアルを探す」から「画面上で教える」へ 迷う瞬間を捉えた工夫
高い差し戻し率と膨大な問い合わせをどう解消するか。松澤氏らが導き出した解決策は「マニュアルを探す手間をなくし、迷う瞬間に画面上でナビゲートする」ことだった。そのための手段として、画面上で操作ガイドやナビゲーションなどを表示するデジタルアダプションプラットフォーム「WalkMe」の導入に踏み切った。
「経費精算システムの画面操作中、まるで隣に経理の熟練担当者が座っていて『次はここをクリックして』『ここは例外だから備考欄に理由を入れて』と教えてくれるような状態を、システムの画面上に作り出すことを目指しました」(松澤氏)
入力内容に不足があれば、システム上で提出前にアラートを出し、そもそも差し戻しが発生しない環境を構築する。
松澤氏がこのプロジェクトの最終的な目標として据えているのは、単なる業務効率化ではない。「期待しているのは『付加価値業務へのシフト』です。経費精算の形式的なチェックに時間を取られるのをやめ、そこで生み出した時間を、経営管理の高度化という経理本来の役割への投資に回す。これが私たちの目指す姿です」(松澤氏)
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