「スタバのレシート持参でコーヒー半額」 年商4億円のご当地チェーン「すなば珈琲」の“逆張り”経営(5/5 ページ)
鳥取県で展開する「すなば珈琲」は、観光客の需要を取り込んで成長し、観光スポットとしての人気を確立している。ブランドを築き上げた創業者に、創業時の思いやスタバ人気を逆手に取ったユニークな戦略の狙いについて聞いた。
勢いある「すなば」から、持続可能な「すなば」へ
10年以上にわたり現場で働いて見えてきた課題は、店舗運営の改善と組織基盤の強化だ。
「サイフォンや食へのこだわりを貫くことは、言い換えると手間がかかり、現場の負担が増えることでもあります。店舗が増えるにつれ、人材もクオリティーもカバーできなくなることもありました。従業員の労力がすり減らない店舗経営を考えていく必要があります」(春希氏)
とはいえ、すなば珈琲の象徴であるサイフォン式コーヒーは続ける方針だ。サイフォン抽出と大容量カップの提供は、1回の抽出で約2.5杯しか取れず、回転率を上げにくい。この品質へのこだわりを維持しつつ現場の負荷を下げるため、ECサイトや物販、外部チャネルの開拓に注力している。
鳥取県米子市で菓子を製造販売する寿製菓とのコラボ土産商品の展開や、阪急百貨店との取引に加え、近年ではクレーンゲーム専門店「回遊館」と契約。クレーンゲームの景品としてリピート率が高い「コーヒーのドリップパック」を提供するなど、店舗外から自動的にキャッシュが入る仕組みを構築する試みを始めている。
一方、勤務体制では、“新”鳥取駅前店でコロナ禍を機に営業時間を短縮。需要が集中する早朝・モーニングに特化して、平日は夕方4時に閉店するスタイルへ移行した。夜間のコストを削り、翌日の仕込みと従業員の生活の質(QOL)向上を優先させた形だ。
「僕は父のような大胆な経営はできません。でも、現場で一緒に汗を流してきたからこそ、従業員の気持ちが分かる。働く人たちの生活が安定し、心にゆとりが生まれて初めて、お客さまへ良いサービスが提供できると思います」(春希氏)
すなば珈琲の名物の一つが、鳥取砂丘の砂を使ってオーブンで焙煎(ばいせん)した「砂焼きコーヒー」。手間暇かけて砂の熱でムラなくいられた豆は、深いりでありながらえぐみがなく、サイフォン抽出であっさりとしたまろやかな一杯になる。
「手間がかかるからこそ、このサイフォンと砂焼きの組み合わせはやめたくないですね。これが、鳥取にすなば珈琲がある理由ですから」(春希氏)
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