毎月“地獄の3日間”に追われた病院経理 年間1200時間を削減、現場の「今のままでいい」をどう乗り越えた?(1/3 ページ)
毎月14〜16日の「地獄の3日間」に請求書の約8割が集中し、深夜まで処理に追われていた病院経理。インボイス管理サービスの導入で、年間約1200時間の業務削減を実現した。現場からは「今のままでいい」との声も上がったという。反対や不安をどう乗り越え、導入を進めたのか。
医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院の経理部には、毎月14〜16日の「地獄3日間」に、請求書の約8割が集中する。届いた請求書を確認し、必要に応じて問い合わせながら、月次報告の期限までに処理を終えなければならない。人手不足の中、深夜まで業務に追われることもあった。
同病院で経理課・経営企画室係長を務める野田亜紀人氏は、こうした状況に悩んでいたと話す。
転機となったのが、請求書処理のデジタル化だ。業務の見直しによって、請求書1件当たりの処理時間を約10分短縮し、年間約1200時間の業務削減を実現した。
同院で始まった取り組みは、徳洲会グループ内の他施設にも広がっている。人手不足に悩む1病院の業務改善は、どのように法人全体の経理改革へと発展したのか。
本記事はSansanが開催したユーザーカンファレンス「Sansan Innovation Summit 2026」の講演の一部を記事化したものです。
人手不足の中、毎月訪れる「地獄の3日間」
徳洲会は全国に約400の拠点を持つ医療グループだ。その中核を担う湘南鎌倉総合病院は職員約2300人を抱えており、年間売上高は500億円に上る。
野田氏が入職した当時、経理部門は上司2人と野田氏の3人体制だった。しかし、翌年に責任者だった上司が退職。その後、部下が1人加わったものの、もう1人の上司も退職し、野田氏と部下の2人体制になった。
当時、野田氏は入職3年目。経験が十分とはいえない中、忙しい病院の経理業務を新人2人で回さなければいけなくなった。特に負担が大きかったのが、請求書の処理業務だ。
月約400件の請求書は、届くタイミングに偏りがあった。毎月10日頃から届き始めるのは全体の約2割で、残りの約8割は14日頃に資材課からまとめて届いていた。月次報告の期限は毎月17日の昼。つまり、14〜16日の3日間で、請求書の大半を処理しなければならなかった。
野田氏は「締め切り近くになると、現場から請求書がバラバラと届き続けます。今日中に終わるんだろうか、そう思いながら机に向かっていたのを覚えています。まさに毎月やってくる『地獄の3日間』でした」と振り返る。
経理部を悩ませた、アナログ運用とインボイス制度
背景には、業務のアナログな運用があった。取引先から届いた請求書は、まず総務課で仕分けし、各部署へ振り分けられる。各部署で請求書を開封し、目視で納品書の内容と照合した上で、現場の上長に回覧する。その後、ようやく経理部門に届く仕組みだった。
請求書が経理部門に届くまでに2〜3日かかり、受領後も台帳への入力や科目確認、ファイリングなど、複数の作業が待っていた。これら全てを手作業で進めていた。
当時は、Excel台帳の共同編集の仕組みがなかったため、請求書の処理は特定の担当者に依存し、他の職員に業務を分担しにくい状態になっていた。
さらに負担となったのがインボイス制度への対応だ。請求書に記載された登録番号の確認や税率の区分など、処理に必要な作業が増えた。
世間のデジタル化によって、電子請求書の受領も増えていたが、院内には電子請求書を処理する仕組みが整っていなかった。そのため、電子データで届いた請求書は、紙に印刷して処理していたという。
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