相手のAI訴訟で弁護士費用が10倍に? 米国で急増する「本人訴訟」の恐ろしい実態(1/3 ページ)
弁護士を立てずに自ら裁判を起こす「本人訴訟」が米国で急増している。背景にあるのは生成AIの普及だ。訴状の5件に1件にAIの文章が含まれ、書面作成の敷居が激変した。しかし、訴える側のコストが劇的に下がった一方、反論を迫られる相手側の弁護士費用は10倍に跳ね上がり、架空判例の乱発で裁判所も疲弊している。司法アクセスの民主化という美名の陰で、防衛側の負担ばかりが増大する「AI訴訟」の歪んだ実態に迫る。
「弁護士は度を越して根拠のない訴訟を起こせば、処分を受けたり評判を落としたりする。だが弁護士でない人は、そうしたことをあまり気にしない」
米ホワイトハウスのAI政策顧問を経て、米OpenAIで政策チーム「Strategic Futures」を率いるディーン・W・ボール(Dean W. Ball)氏が10月18日、自身のX(旧Twitter)にこう投稿した。
AIの助けを借りることで、根拠の薄い訴えでも弁護士なしで訴訟を起こせると考える人が増えるのではないかという懸念だ。米国のデータを見ると、弁護士を立てない訴訟はすでに急増している。
本人訴訟が倍増 訴状の2割にAI文章
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者であるアナンド・シャー(Anand Shah)氏と、米南カリフォルニア大学博士課程のジョシュア・レヴィ(Joshua Levy)氏が2026年3月に公開した査読前論文によると、弁護士を立てずに自分で起こす「本人訴訟」は、受刑者によるものを除くと2005〜2022年度に年平均2万3210件だった。それが、2025年度は4万1490件へとほぼ倍増した。
米国の連邦民事訴訟全体に占める割合も、長年11%前後で安定していたものが16.8%にまで上がった。
無作為に選んだ訴状を調査したところ、AIが書いた文章を含むものは、2023年のわずか1%から、2026年初めには18%(約5件に1件)に急増していた。
特に増加が目立つのは、雇用差別や住宅の差し押さえ、借金や信用情報を巡る争いなど、書式が定型化しやすい分野だ。一方で、特許や証券のように高度な専門知識が欠かせない分野では、ほとんど増えていない。
米New York Timesは、ミネソタ州で起きた事例を伝えている。
ある69歳の男性が元妻やその弁護士、州の判事を訴えた手書きの訴状は、1カ月足らずで裁判所に退けられた。しかしその3カ月後、男性は「ChatGPT」と「Claude」を使って訴状を作成し直し、さらに50件もの書面を提出した。
同州連邦地裁のパトリック・シルツ(Patrick Schiltz)首席判事(当時)は「何百ページもの書類を裁判所に投げ込み、訴えを裏付ける事実や主張を裁判所に探させることはできない」として再び訴えを退け、今後の書面は予告なく廃棄すると命じた。同地裁で本人訴訟を審査する担当者によると、2025年3月頃から受刑者以外の本人訴訟が約5割増えたという。
© エクサウィザーズ AI新聞
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