2015年7月27日以前の記事
検索
コラム

相手のAI訴訟で弁護士費用が10倍に? 米国で急増する「本人訴訟」の恐ろしい実態(2/3 ページ)

弁護士を立てずに自ら裁判を起こす「本人訴訟」が米国で急増している。背景にあるのは生成AIの普及だ。訴状の5件に1件にAIの文章が含まれ、書面作成の敷居が激変した。しかし、訴える側のコストが劇的に下がった一方、反論を迫られる相手側の弁護士費用は10倍に跳ね上がり、架空判例の乱発で裁判所も疲弊している。司法アクセスの民主化という美名の陰で、防衛側の負担ばかりが増大する「AI訴訟」の歪んだ実態に迫る。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
ExaWizards

訴えられた側の防衛費は10倍に

 この負担は、訴えられる側にも重くのしかかる。米テック系メディアのFuturismの取材に応じた弁護士によると、従来なら約2000ドルで片付いた紛争が、相手がAIで申し立てを繰り返したために2万ドル(約300万円)を超えたという。5000ドル程度で済むはずの案件が7万ドルを超えた例もある。

 米フロリダ州では、数百ドルの管理組合費の滞納を巡って住民夫婦が起こした本人訴訟が、AIで書面を量産するうちに「管理組合と弁護士が組織ぐるみで住民をだましている」と陰謀論的に主張を拡大させ、泥沼化した。ある弁護士は、以前ならこうした原告も高額な弁護士費用を払えずに途中で諦めていたが、AIの登場によって低コストで訴訟を継続できるようになってしまったと指摘する。

 企業も決して無縁ではない。米国の訴訟データ分析会社Lex Machinaによると、連邦裁判所の雇用訴訟に占める本人訴訟の割合は、2021年の10%未満から、2025年には16%超へと上昇している。

素人の原告に制裁金は通用するか

 AIがもっともらしく捏造した「架空の判例」が裁判所に提出されるトラブルも後を絶たない。そうした事例を集めたデータベースによると、2026年8月末時点で確認された1981件のうち、本人訴訟の当事者によるものが1136件を占め、プロの弁護士による793件を上回っている。AIの出力内容の真偽を確かめずに法廷へ出してしまうリスクは、弁護士よりも一般の素人原告の方がはるかに高い。

 本人訴訟の当事者であっても、司法による処分と無縁でいられるわけではない。根拠のない訴えに対しては制裁金が科されることがあり、濫訴(むやみに訴訟を繰り返す行為)を続ける原告には、新たな訴訟を起こす前に裁判所の事前許可を得るよう命じた例もある。

 しかし、企業側の代理人を務める米法律事務所Davis Wright Tremaineは、原告側に支払い能力がなければ、裁判所が費用の負担命令を下したところで回収できないケースが多いと指摘する。その場合、膨れ上がった巨額の防御費用は、訴えられた側が自腹で泣き寝入りするしかないのが実情だ。

photo
AIがもっともらしく捏造した「架空の判例」が裁判所に提出されるトラブルも後を絶たない

© エクサウィザーズ AI新聞

ページトップに戻る