人の力で「ミセスを見つけた」 ユニバーサル ミュージック社長が語る、AI時代に残る「人間の仕事」(2/2 ページ)
テクノロジーの発展によって音楽の制作や届け方が変わる中、音楽会社のユニバーサル ミュージックは何を重視しているのか。AI時代でも変わらない、人間にしかできない仕事とは。
音楽制作現場では「生成AI」をどう使う?
AIの普及によって、音楽業界では「時間」と「距離」が大きく変わったという。
例えば、これまでマーケティングでは、調査会社やコンサルタントに依頼し、顧客の反応を分析した上で、楽曲のタイトルやジャケットなどを検討していた。AIの活用によって、こうした分析や顧客とのコミュニケーションをより迅速に進められるようになったという。
音楽制作でも変化が起きている。アーティスト自身がAIから知識を得たり、創作や制作活動に活用したりすることで、表現の幅を広げられるようになった。
また、言語の壁を越えて日本の音楽を海外に届ける上でも、AIの活用に期待を寄せる。これまで日本の音楽は海外に届きにくいという課題があったが、AIによって世界中の人に音楽を届ける可能性が広がっている。
こうした中で重視するのは「アーティストの価値」を高めることだ。新しいファンにどう届けるか、ファンとの関係をどう深めるか、長く愛されるにはどうしたらいいのか。藤倉社長は「YouTubeで何回再生されたかということではなく、アーティストの価値を高めることを大切にしている」と強調する。
AIがあれば、Mrs. GREEN APPLEを見つけられたのか
AIによって音楽制作の可能性が広がる一方、人間にしかできないこともある。ユニバーサル ミュージックが長年担ってきたのが、まだ世の中に知られていない才能の発掘だ。
中学生や高校生、大学生、社会人など、必ずしも最初からプロのアーティストを目指しているわけではない人の中から、新たな才能を見つけ出し、アーティストとして成長できるよう支援してきた。
藤倉社長はその例として、3人組バンド「Mrs. GREEN APPLE」を挙げる。同社が彼らの才能を見いだした2013年当時、AIはまだ普及していなかった。
当時、社内の担当者から「素晴らしい才能を持つ16歳がいる。歌声も詩も素晴らしい。こんな天才は見たことがない」と報告があったという。一方、本人たちはまだ実績がなかった。社内では「インディーズ作品も出しておらず、ライブもしたことがないのに、人を集められるのか。何のデータもない中で本当に成功するのか」といった懸念もあったという。
「彼らと、どのようなアーティストになりたいのかを対話した。人間としての熱量や意思。必ずしもそれが、百発百中で世の中に伝わるかは分からない。しかしテクノロジーを全く使わずに人の力で才能を探せたのは素晴らしいことだと思う」(藤倉社長)
AIの登場によって、人間が担う役割そのものがなくなるわけではない。AIにできることはAIに任せ、人間は本来取り組むべき仕事に力を注ぐ。藤倉社長は「本来、人間がもっと輝くべきことを、われわれはやっていくべきだ」と話した。
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