クラシック音楽の街を“音”なく駆け抜ける「X-TRAIL FCV」

» 2007年07月25日 11時13分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
photo 「X-TRAIL FCV」。すぐに走り出せるアイドリング状態(?)でも、寄りかかってバイオリンが弾けるほど静粛性に優れる

 日産自動車は先日、8月20日から一週間にわたって軽井沢で開催される芸術祭「軽井沢八月祭」に協賛し、アーティストの送迎のために4台の燃料電池車(FCV)を提供すると発表した。同社によると、「1つのイベントに4台が集まるのは初」だという。

 軽井沢八月祭は、ソニー相談役の大賀典雄氏が発起人となり企画したクラシック音楽の祭典。2004年に同氏が軽井沢町に寄付した音楽ホール「大賀ホール」を中心に、軽井沢町および御代田町に点在する美術館や教会などを利用して期間中に200を上回るコンサートが催される予定だ。公演チケットは1000円からと手頃で、ほかにも町内の随所で若手演奏家たちによる無料コンサートなどが行われる。また、クラシックカーのパレードや写真展が催され、地元飲食店は特別メニューを企画するなど、まさに町を挙げての一大イベントとなる。

 そして、八月祭の隠れた“もう1つのテーマ”が環境だ。実はすべての公演チケットには200円分の環境基金が含まれており、軽井沢の環境対策のために寄付されるという。また期間中に町内のさまざまな施設や店舗で特典やサービスを受けられる公式パス「軽井沢八月祭パス」(200円)や「環境チャリティ・ゴルフ大会」の収益も全額寄付。イベントを企画した財団法人ソニー音楽芸術振興会では「環境保護を全面に押し出すことはないが、緑溢れる軽井沢なら音楽と自然の良さがダイレクトに伝わる。環境を考える良い機会だと思う」(財団法人ソニー音楽芸術振興会企画事業部ディレクターで軽井沢八月祭実行委員会のプロデューサーを務める川崎映子氏)と話している。

photophoto 八角形の「大賀ホール」(左)と軽井沢八月祭実行委員会のプロデューサーを務める川崎映子氏

 現地で運用される4台の「X-TRAIL FCV」は、“もう1つのテーマ”のキーファクターだ。音楽祭のために国内外から軽井沢に駆けつけるアーティストは70人あまり。その移動手段として、静粛性に優れたFCVをフル活用する考え。期間中は日産の技術担当者4人が現地に赴いてドライバーを務めるほか、一番の問題である燃料補給については大陽日酸の協力で移動式水素ステーションを導入するという。

photo 日産自動車技術開発本部FCV開発部FCV・EV車両開発グループ主担の山梨文徳氏

 さらに、期間中にFCVが地元の小学校3校を訪問し、環境教育を行う計画もある。「3校の生徒はあわせて274人以上になるが、全員にFCVに乗ってもらう。ここ数年環境教育を手がけてきたが、やはり体で触れるのが一番いい」(日産自動車技術開発本部FCV開発部FCV・EV車両開発グループ主担の山梨文徳氏)。

 実行委員会によると、期間中にFCVが走行する距離は延べ数千キロに及ぶ見込みというが、日産では「FCVの信頼性を検証し、乗った人の声を聞く良い機会になる」とみている。「日産のFCVは外観が一般車両と変わらないのでわかりにくいが、軽井沢に来たら探してみてほしい。ビッグアーティストが乗っているかもしれませんよ」。

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