自腹で買った50本超の中から独断と偏見で選ぶ「マイ・ベスト・ボールペン」プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(4/4 ページ)

» 2007年08月23日 08時30分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 ボールペンの世界にも女性に購買ターゲットを絞った商品が多く登場する中、ブッチ切りの先頭を走っているのはスイスのカランダッシュだろう。

 普通サイズのボールペンに比較して少しコンパクトなサイズは、女性の小さなバッグにも難なく収納できる。スワロフスキーのクリスタルをマッピングしたエクリドールコレクションシリーズの「エクラ」はプレゼントアイテムとしても高い需要のあるモデルだ。

 一応名目上は日本国内で500個限定出荷のこのボールペン、実際に女性が自分の為に買った数と、男性がプレゼントの為に購入した数の比率は不明だが、筆記具が女性へのプレゼントアイテムとなることを加速させたことだけは確かだろう。「女性に人気で賞」の筆頭だ。

photo スワロフスキーの小さなクリスタルを全身にまとったカランダッシュの「エクラ」。本体の線模様は天使の髪の毛をイメージ。付属する専用ケースにも大粒のスワロフスキーが1個付く。既に売り切れで後続モデルも市場では希少。ボールペンである条件をまっとうしながら女性を主たる購買ターゲットに絞り、図らずも男性にも買わせるマーケティング戦略は秀逸だ

 筆者もカランダッシュの「メットウッド」と呼ばれるローズウッドを本体の一部に使用したボールペンを日常使いにしている。鉛筆と同じオーソドックスな六角形の断面は文字を書くときに指先で最もホールドしやすく、指先に触れる木の心地よさと、金属とのハイブリッドによる適度な重量バランスは文字を書く筆記具としての基本を押さえている。筆記具としての基本を押さえた上で、その機能を最大限生かす必然的であか抜けたデザインを採用したボールペンは当たり前の様だが実は少ない。

photo 筆者が普段愛用するカランダッシュの「メットウッド」(上)、下の「エクラ」が女性用として多少小振りなのが分かる。カランダッシュにはより小さな10センチクラスのボールペンもあり、豊富なサイズのバリエーションで新市場を開拓している。ボールペンでは今後の注目株だ

 まだまだ初心者ではあるが、ボールペンは、筆者にとって道具でもあり、またある面から見れば趣味、コレクション、はたまた道楽でもある。ちっぽけなボールペンの世界ではあるが、人が直接触れるモノは常に面白い。

パソコン&ネット時代になっても、筆記具の需要は衰えることなく、歴史と伝統ある世界中の企業が、ユニークなテクノロジーや今まで見たこともないアイデア、秀逸なデザイン、そして伝統やブランドパワーの総力をあげてコンペティションしている。「ステーショナリーの世界」は、限定された企業の寡占化によりますます個性の見えづらくなってきたパソコンやケータイの世界よりもずっとエキサイティングで楽しいモノだ。

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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