コラム
» 2008年03月26日 11時25分 公開

+D Style 最新シネマ情報:「つぐない」

今年の映画賞で注目を集めた「つぐない」。たった一度の過ちが取り返しのつかない非情な現実を引き起こす。つらく切なく救われないこの大河ロマンの、特にラストの衝撃は忘れられない。高尚な文芸作品と思わず、ぜひスクリーンで。

[本山由樹子,ITmedia]
photo (C) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

 今年のゴールデン・グローブ賞で作品賞と音楽賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた「つぐない」。英ブッカー賞作家、イアン・マキューアンのベストセラー小説「贖罪」を、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督と主演女優のキーラ・ナイトレイが再び組んで映画化した大河ロマンである。共演は「ラストキング・オブ・スコットランド」「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」のジェームズ・マカヴォイ。

 第二次大戦が始まろうとしていた1935年の夏、イングランド。13歳のブライオニー(シアーシャ・ローナン)は小説家志望の多感な少女。ふと窓から外をのぞくと、庭の噴水のところに姉セシーリア(キーラ)と、使用人の息子ロビー(マカヴォイ)の姿を見かける。2人は口論しているようにも見えたが、しばらくしてセシーリアは下着姿になり、噴水に飛び込む。ロビーが無理やり脱がしたものと勘違いするブライオニー。ロビーに対して淡い恋心を秘めていただけに、その光景は苛立たしいものであった。

 ブライオニーが庭で遊んでいると、ロビーが手紙を持ってやって来る。その手紙をセシーリアに渡して欲しいというのだ。ブライオニーは抑えきれない好奇心から、手紙を読んでしまう。そこには愛の告白とともに、淫らな言葉が記されていた。

 そして、その夜、衝撃的な事件が起きる。こうしてブライオニーの誤解と嘘により、セシーリアとロビーの愛は引き裂かれ、彼らの人生を狂わしてしまう。それはブライオニーにとっても、一生背負わなければならない罪となる。

 バチバチバチというタイプライターの音がリズムを刻み、流れるような音楽によって映画は幕を開ける。オープニングからすでにこの作品に虜になってしまう。以降もタイプライターの音が効果的に使われ、物語をより一層スリリングなものにしている。

 この映画をスリリングにしている要素がもう1つ。それは1つの出来事を、時間軸をずらして、2つの視点で語られること。まずはブライオニーの、少女の思い込みという視点からの映像を観客は見せられ、その後、真実が明かされる。ミステリアスであるとともに、想像力を掻き立てられ、実に巧みなのである。

 役者陣はいずれもうまいが、特にブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンは印象的。

 たった一度の過ちが取り返しのつかない非情な現実を引き起こす。成長したブライオニーは許しを求め続けるが、罪は拭えない。今年オスカーに輝いた「ノーカントリー」同様、つらく切なく救われない作品だが、濃密なシーンが続き、特にラストの衝撃は忘れられないだろう。見終わった後、いつまでもタイプライターの音が胸に鳴り響く。高尚な文芸作品と思わず、ぜひスクリーンでご覧ください。

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(C) 2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

つぐない

監督:ジョー・ライト/原作:イアン・マキューアン/脚本:クリストファー・ハンプトン

出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ

4月12日より新宿テアトルタイムズスクエアほか全国順次ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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