コラム
» 2008年04月24日 17時17分 公開

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」+D Style 最新シネマ情報

19世紀カリフォルニアの、ある石油掘り男の半生を描いたドス黒いサクセス・ストーリー「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」。ポール・トーマス・アンダーソン監督の力量がうかがえる注目作だ。

[本山由樹子,ITmedia]
photo (c) 2007 BY MIRAMAX FILM CORP .AND PARAMOUNT VANTAGE,A DIVISION OF PICTURES.ALL RIGHTS RESERVED.

 始まってから、しばらくの間、セリフがない。真っ暗な穴にもぐり、石油採掘に励む男ダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)。爆弾を仕掛け、時には命を落としかねない危険な目に遭うこともある。土と汗にまみれ、体を真っ黒にして一攫千金を狙う男の隣では、赤ん坊が元気よく泣いている……。19世紀のカリフォルニアの、ある石油掘り男の半生にスポットを当てた、ドス黒いサクセス・ストーリー「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」。ガッチリと心を持っていかれるこのオープニングだけでも、ポール・トーマス・アンダーソン監督の力量がうかがえる。

 プレインヴューは男手ひとつで育てた息子とともに、様々な土地を訪れては石油採掘を行っている。やがて田舎町リトル・ボストンにやって来た彼は、第3派教会の牧師イーライ(ポール・ダノ)への寄付を交換条件に、この地で石油を掘り始める。見事、石油を掘り当て、プレインヴューは石油王へと昇りつめ、町にも富と活気がもたらされる。ところが、イーライは寄付の約束を反故する彼に苛立ちを隠せない。そんな中、ある事件が起きる……。

 本作で、ダニエル・デイ=ルイスは「マイ・レフトフット」に続き2度目のアカデミー賞主演男優賞に輝いたが、見れば受賞も納得のハイテンションな演技を披露している。どこまでも欲望を肥大させ、狂気に彩られながら、家族も仲間も得られないまま、人生を転落させていく男。その姿は愚かで滑稽にすら映るが、憎めないオーラを発している。

 そして、もう1人の“バケモノ”を演じるのがポール・ダノ。「リトル・ミス・サンシャイン」のニーチェかぶれの兄ちゃん役でもイイ味を出していたが、ここではデイ=ルイスと対立する牧師役で、村人たちに「悪魔よ、去れ」と絶叫する姿はカルト宗教の教祖さながら。富と引き換えに、古き良き何かを見失った村人たちは、金と欲望に毒されたカルト宗教に入れあげている。まるで能面のように表情を変えずに、それでいて人間の持つ危うさを表現したダノの演技は素晴らしい。デイ=ルイスとダノがぶつかり合うシーンは、これが演技なのか? と、しばし呆然となるほどの迫力なので、特に注目してほしい。

 音楽を担当したのは、レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッド。終始流れっぱなしの不協和音が登場人物の心情を代弁し、不穏な未来を語っているようで、しばらく頭から離れないだろう。

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(c) 2007 BY MIRAMAX FILM CORP .AND PARAMOUNT VANTAGE,A DIVISION OF PICTURES.ALL RIGHTS RESERVED.

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン

原作:アプトン・シンクレア

出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ

配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン

4月26日よりシャンテシネほか全国順次ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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