世界最大の時計フェア「バーゼルワールド」+D Style特集 バーゼルワールド2008(3/3 ページ)

» 2008年04月25日 10時00分 公開
[ITmedia]
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コンプリケーション&ラグジュアリー時計
ホール5で味わうコアな楽しみ

 バーゼルワールドのメイン会場である「ホール1」の後ろには「ホール5」という建物がある。前者は有名時計ブランドや大手メーカーによる出展だが、後者は展示規模が小さいものや、将来「ホール1」へ進出しようと意欲満々の時計ブランドブースが多数構えている。その中でも見逃せないのが「AHCI」のブース。ここは個人レベルで活躍している時計師が自らの作品を持ち寄り展示する場であり、その発想力や技術力は目を見張るものが多い。これまでにフィリップ・デュフォー、アントワーヌ・プレジウソ、ヴィンセント・カラブレーゼといった著名な時計師がここから輩出されている。

ライナー・ニーナバーの最新コレクション

 右上の写真で紹介している作品はドイツ人の時計師、ライナー・ニーナバーによるレトログラードを中心とした最新コレクション。円運動による一般的な時刻表示とは異なり、文字盤上の針が往復運動することで分や曜日などを表示する。ケースや文字盤に見られる精緻な仕上げに、彼の時計作りへのこだわりと情熱が伝わってくる。

(左)「トゥールビヨン・ミステリアス」1 (右)「トゥールビヨン・ミステリアス」2

 こちらは、「トゥールビヨン・ミステリアス」と名づけられたクロック。腕時計に比べてサイズが大型な分、ビジュアル的な要素が重要になるクロック。“ミステリアス・クロック”と呼ばれるこのタイプは、一体どこにムーブメントがあり、どんな仕掛けで針が動いているかと思わせる、不思議なメカニズムを備える。同様の仕掛けを持つタイプは、カルティエでも古くから作られおり、世界中の時計愛好家を魅了している。

(左)ムーンフェイズやカレンダー表示など複数の機能を搭載した懐中時計型クロック (右)複雑機能搭載クロック「シンクレア・ハーディング H1」

 左の写真はムーンフェイズやカレンダー表示など複数の機能を搭載した懐中時計型のクロック。シースルーケースバックを通して内部のメカニズムが鑑賞できるのは、時計ファンにはたまらない仕掛け。

 右は、「ハウルの動く城」を思わせる迫力満点の「シンクレア・ハーディング H1」。1967年マイク・ハーディング氏によって設立されたクロック専業メーカー、シンクレア・ハーディングによる作品で、英国伝統の時計製作技法を順守する職人が、1700年代の偉大な英国の時計師ジョン・ハリソンに敬意を込め、5年の歳月をかけてハンドメイドで完成させた複雑機能搭載のクロック。

ジュネーブの高級ホテルにて開催の時計エキシビション
ロジェ・デュブイ、ピーター・スピーク・マリン、クリストフ・クラーレ

 バーゼルワールドの期間後半に入ると、今度はジュネーブで「SIHH」という高級時計フェアが開催される。バーゼルワールドが入場料を払えば一般市民も入場可能なフェアなのに対し、こちらは参加時計ブランドからの招待状がないと入場は不可。しかし同時期にジュネーブ市内のホテルで、いくつかの時計ブランドがエキシビションを開催している情報を入手したので、バーゼルから特急列車に乗ること3時間弱でフランスに隣接したジュネーブに移動した。めざすはジュネーブでもトップクラスの高級老舗ホテル「ボーリバージュ」だ。こちらでは有名な時計師3人のコラボレーションによる新ブランド「メートル・デュ・タン」と、最新時計ケースにオールドムーブメントを搭載させることで知られる「ダービー&シャルデンブラン」といった時計ブランドがエキシビションを開催していた。

 上の写真は、デイビッド・ベッカムと時計師ではなく、3人の著名な時計師。左から、ロジェ・デュブイ、ピーター・スピーク・マリン、クリストフ・クラーレ。中央のベッカム似のピーターは、昨年までAHCIに時計を出品していた英国人時計師だ。仏語で「メートル・デュ・タン」というブランドは、マスター・オブ・タイムの意味し、文字通り時の巨匠が集まって凄い時計を製作した。なんとトゥールビヨン、ダブルレトログラード、モノプッシュクロノグラフ、ローリングバー表示によるムーンフェイズ/曜日表示。しめて6つの複雑機能が1つの時計に搭載したシロモノだという。

(左)議論する3人 (中)完成した時計 (右)時計の内部構造

 構想は3年前、最終デザイン決定は2年前、そして実際の製作には1年前から着手。3人の大物時計師が「ああでもない、こうでもない」と熱い議論をくりかえした後、完成した時計は、6つの複雑機能、ムーブメント部品点数558個、ケース部品点数104個、ケースサイズは縦62.6ミリ、横45.9ミリ、総重量295グラムという迫力のモデルに仕上がった。

生まれながらのヴィンテージテイスト

 スイス、ラ・ショード・フォンの時計学校の教授であったジョージ・ダービーが1946年にレネ・シャルデンブランと共に設立した「ダービー&シャルデンブラン」。このブランドの特徴はクォーツ旋風で打撃を受けた1970〜1980年代に、スイス国内の時計工房から買い集めたオールドムーブメントをきれいに仕上げ直して、新設計のケースに収めた時計作りにある。エキシビション会場には新作にまじって、かつて少数生産でリリースした歴代モデルの展示を行っていた。デザインは1950年代前後の機械式時計全盛期を髣髴とさせるヴィンテージスタイル。しかも中身はオールドムーブメント。アンティークの時計が欲しいけれど、メンテナンスが心配、という人にはまさにお薦めの時計。

(左)1997年発表の25本限定モデル「ドクター」  (右)1996年発表の「ラトラパンテ」

取材・文/+D Style編集部



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