“虫の眼”で反射的によける車――日産ブースCEATEC JAPAN 2008

» 2008年09月30日 14時46分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 CEATEC JAPAN 2008の日産自動車ブースでは、「カーロボティクスと通信が拓く未来のクルマ」をテーマに、先日9月24日に発表のあったNTTドコモおよびシャープとの共同開発技術「インテリジェントキー搭載ケータイ」や、昆虫の回避行動を応用した「Biomimetic Robot Car(BR23C)」を展示していた。

photophoto CEATECの日産自動車ブース(左)「インテリジェントキー搭載ケータイ」(右)については追って記事を掲載予定

昆虫をヒントにした“ぶつからないクルマ”

 同社のカーロボティクス技術紹介では、“ぶつからないクルマ”の実現に向けた技術の一環として、昆虫の回避行動を応用したBiomimetic Robot Car(BR23C)を開発。その技術を採用した小型ロボットを展示していた。

photophoto 昆虫の回避行動を応用したBiomimetic Robot Car(BR23C)

 “ぶつからないクルマ”は、自動車メーカーにとって永遠のテーマ。だが「障害物を認識」→「回避のための最適な行動パターンを計算」→「回避」という、従来から考えられていた回避行動システムでは計算に時間かかり、高速で走行する自動車でのとっさの回避や、人ごみの中での的確な回避行動というものに対応できなかった。

 一方、自然界に目を向けてみると、昆虫は人間よりもはるかに小さな脳しか持っていないのにもかかわらず、反射的な行動の組み合わせで巧みに障害物や天敵を避けて行動している。日産は、この昆虫の回避行動に着目。東京大学と共同で昆虫の回避行動パラメーターを数値化するとともに、実験結果をスケール変換。これを車輪動作モデルに応用し、Robot Car(BR23C)に実装して“虫の動き”を実現したという。

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 車輪動作モデルとして紹介されていた自走型ロボット「BR23C」には、レーザレンジファインダというセンサーを搭載。このセンサーが昆虫の複眼の役割を果たしている。

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 「昆虫の複眼は、視野角の大きさで距離を、変化の大きさで障害物の速度をそれぞれ計っている。BR23Cでは、レーザレンジファインダがこの複眼の役目を果たして、パーソナルスペースに入ってきた障害物を検出。その検出情報に応じて減速や回転行動を行って障害物を瞬時に回避する」(ブース担当者)。

photophoto Biomimetic Robot Car(BR23C)は、人間が近づくとスッと逃げる(回避する)。回避する方向に壁があると、その場で止まってしまった

 実際のクルマへの応用には、この回避行動でハンドル操作をすべて預けてしまっていいものかという課題もあるが、そういった危険性も想定して開発は進められているようだ。「180度の視野で周囲の情報を取り込んでいるので、もし仮に回避先にさらなる障害物など危険要因がある場合には、それも反射的に回避する行動をとる。(視野角がそれほどない)人間よりも回避行動の幅は広くなる。また、ハンドル操作までしなくとも、瞬時に警告して回避をサポートするといった応用も考えられる」(ブース担当者)。

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