コラム
» 2008年10月07日 11時49分 公開

「ブラインドネス」+D Style 最新シネマ情報

視力を失う奇病が世界に広がり、混乱と狂気の闇が迫る。今年のカンヌ国際映画祭オープニング作品でもあった話題作「ブラインドネス」を紹介。

[本山由樹子,ITmedia]
photo (C) 2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures

 リオ・デ・ジャネイロの貧民街を舞台にギャングの闘争を描いた「シティ・オブ・ゴッド」、アフリカを舞台にした巨大企業を巡るサスペンス「ナイロビの蜂」。これまでも社会派のイメージを強く打ち出し、鋭い人間観察力に定評のあったフェルナンド・メイレレス監督の新作が「ブラインドネス」だ。今年のカンヌ国際映画祭オープニング作品としても注目された。

 あるひとりの日本人男性(伊勢谷友介)が車を運転していると、突然、目の前が真っ白になり、失明する。立ち往生していると、親切な男が家まで送ってくれるが、男は家を物色し、そのまま車を持ち逃げ。日本人の男は妻(木村佳乃)に連れられて眼科に行くが、目に特別な異常は見られなかった。だが、眼科医(マーク・ラファロ)も、待合室にいた患者たちも、車を盗んだ男も、日本人の妻も感染し、失明してしまう。

 この謎の伝染病は驚異的な伝染力で人々の視界を奪い、瞬く間にまん延していく。原因が特定できず、混乱を恐れた政府は感染者たちを強制隔離。眼科医の妻(ジュリアン・ムーア)だけはなぜか失明せずに、夫の身を心配して一緒に収容所に入る。彼女は見えていることを隠し、みんなの世話をする。やがて収容所に軟禁された感染者たちは不安と恐怖の中、恐るべき本性をあらわにしていく……。

photophoto (C) 2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures

 原作はノーベル文学賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説「白い闇」。映画化のオファーはたくさん来たらしいが、「ゾンビ映画にされかねない」とかたくなに断り続けていたそうだ。確かに、感染者たちが手を繋いで街をさまよい、食料を求めてスーパーを荒らす様は、ゾンビに見えなくもない。

 この映画は、極限状況下になると暴力が支配し、文明がいとも簡単に崩れ去る、と警告しているようだ。ガエル・ガルシア・ベルナル扮する収容所の独裁者が食べ物を管理、食べ物がほしければ金品をもってこいと脅迫。金品が尽きると女性たちにセックスを強要する。メイレレス監督は、人間の醜い本能をまざまざと見せつける。まあ、極限状況下にならずとも、今の世の中は暴力がまん延しているが。

 人間描写に加えて、豪華キャストも見どころのひとつ。中でも伊勢谷友介が重要な役を担っているのには驚いた。最初に失明するのが伊勢谷なら、ラストで鍵を握るのも彼だ。線は細いが、ほかのハリウッドスターに見劣りすることなく、堂々と渡り合っている。

 クレジットには医者、医者の妻、最初に失明した男、泥棒……と記され、登場人物たちには名前がなければ、国籍もはっきりと明かされない。“人は、人を外見や地位などで判断してはいないだろうか”“見えなくなって初めて見えてくるものがある”というメッセージが伝わってくる。

 目を覆いたくなるようなシーンも出てくるが、白い闇によってもたらされる恐怖、狂気、そして白い闇によって気づかされる大切なモノをしっかりとその目で確かめてください。

ブラインドネス

監督:フェルナンド・メイレレス/原作:ジョゼ・サラマーゴ

出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、アリス・ブラガ、伊勢谷友介、木村佳乃、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナル

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

11月22日より丸の内プラゼールほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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