アニメにはない「予想外」求めて――「ヘブンズ・ドア」マイケル・アリアス監督インタビュー+D Style News(1/2 ページ)

» 2008年12月13日 12時54分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 アニメーション映画「鉄コン筋クリート」の公開から約2年。CGのスペシャリストにしてアニメ監督でもあるマイケル・アリアス氏が、今度は“実写”の監督として新境地に挑む。それが、2009年2月7日に劇場公開される映画「ヘブンズ・ドア」だ。

photo (C)2009アスミック・エースエンタテインメント/フジテレビジョン/ジェイ・ストーム

 同作の原作になったのは、1997年にドイツで公開されヒットした「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」。重い病によって残りわずかの命となった若者2人が、「天国で誰もがその美しさを語りあう」という“海”を目指して病院を抜け出し、旅を始める。シンプルで骨太なストーリーの中で、死を覚悟した若者2人の絆や、自分たちの夢を叶えていく様子が、時におかしく、切なく、力強く描かれていく。

photo 原作プロデューサーのトム・ツィクラー氏(左)とマイケル・アリアス監督(右)

 アリアス監督によってリメイクされた本作も、そのストーリー構成を忠実に再現しているが、若者の一方を男性から少女に変更するなど、“アリアス流”の解釈で作品のテイストは大きく異なるものになった。

 残り3日の命を宣告された若者・勝人を演じるのは長瀬智也さん。病院以外の世界を知らない少女・春海には14歳の福田麻由子さんを起用。“ちょいワル青年”と“すました少女”が織りなす、みずみずしいやりとりが作品にちりばめられている。

 そんな「ヘブンズ・ドア」に対する思いを、マイケル・アリアス監督と、原作のプロデューサーであるトム・ツィクラー氏に語ってもらった。


――“鉄コン”でアニメ監督として有名になりましたが、実写に挑戦したのは?

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マイケル・アリアス監督(以下、アリアス) まず、「鉄コン筋クリート」はアニメじゃないと表現できないと最初から思っていたし、アニメ畑の才能あるスタッフにも恵まれて、アニメーションで作ることに必然性がありました。でも僕自身はアニメーターではないし、絵はヘタなんです(笑)。

 「ヘブンズ・ドア」って、ロードムービーじゃないですか。それで、ロードムービーを撮るなら、アドリブの要素が欲しいなと思いました。ランダムな自然現象も含めて、なるべくライブな感じを取り入れたかったんです。でも、そういうことはアニメーションではやりにくい。設計書を作って、長い時間を掛けてその通りにコツコツやっていくのがアニメーションなので。

 鉄コンでは、あまりきっちりフレームに収まっていない絵作りをして、ドキュメンタリーのようなライブ感を目指したんだけど、結局のところは、それも計算したものなんです。だけど実写だと、計算することのできない“予想外の要素”というのが確実に出てくる。それに、期待していました。鉄コンをやったからこそ、そういう作品作りを味わってみたいと思ったのかも。


――そうした予想外の実写に挑戦することで、どんなところにアニメーションとの違いを感じましたか?

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アリアス うーん……やっぱり、“迷うヒマがない”ということ。とにかく突き進むのが正しいというか……アニメーションって作る期間が長いので、正しい答えがその時出せなくても、それをひとまず棚において、後で考えたりすることができる。自分が思い描く映像に近づけるための時間が比較的あるんです。でも実写の撮影は短い時間の中でやりきる必要がある。特に僕らはセットは使わずに全部ロケーションで撮影したから、天気とか、日が暮れる時間とか、いろいろと制限がありました。

 そういう制約の厳しいスケジュールや環境を前にして、自分がどこを大事にするか、譲らないかというウェイトはアニメとは変わってきます。限られた1日の中で、ひとつのことしかできないという状況になったとき、何を犠牲にするかを考えなきゃいけない。僕論でいうと、正しいかどうか考えるよりは、自分なりに答えを出すことが大切。

トム・ツィクラー氏(以下、ツィクラー) ちょっと質問があるんだけど、撮影は何日?

アリアス 40……41日、かな。

ツィクラー へえ! 僕らもオールロケだったんだけど、大体一緒だね。

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