「トリスウイスキー」といえば、日本の大衆的なウイスキーの代表。昭和の高度経済成長期に各地で人気を博した“トリスバー”は、手ごろな価格で洋酒を楽しむことができる“庶民の憩いの場”だった。今回紹介する「横浜トリスバー」も、リーズナブルな価格で肩肘を張らずにくつろげる雰囲気を持つ一軒。赤いネオンと、“トリスおじさん”ことアンクルトリスの看板が目印だ。 昔ながらのトリスバーをそのまま再現した店ではない。今の時代にあった、「気兼ねなく入れて、安くて、長く愛されるバー」を、店長の三品佳生さんは目指している。そんなこだわりの一端は、カウンター奥の黒板にずらりと並ぶフードメニューからもうかがえる。「何軒もハシゴする時代でもないですし……つまみで簡単にというよりも、小さい皿でもちゃんとした一品料理として食べられるものをお出ししています。適当なものは出しません」(三品さん) 地元の“常連”が多いこの店だが、「閉じた感じにはしたくない」という。「食べたいもの、飲みたいもの、あるいは話したいこと。バーに来る方の動機はさまざまだと思いますが、初めてだからといって気兼ねする必要はないと思います。何か知りたければ、メニューを見ずに話しかけていただいても、構わないんです」(三品さん)。 |
海の向こうでは、バーという空間は知らない人とのコミュニケーションを楽しむ社交場としての意味合いも強い。「いろんな国、いろんなタイプの人が集まって、それがおもしろい空間になっていく」――バックパッカーでもあった三品さんのそんな経験が、お店を始めるきっかけにもなっているという。早い時間帯ではあまり実現しないというが、夜がふけるとともに、知らない人同士の会話が自然と始まることもしばしばだ。そんな夜を、洋食屋で足かけ10年経験を積んだ三品さんが作る料理と、手頃な価格のお酒が、いっそう楽しいものにしてくれる。 |
手作り感覚を大切する店のポリシーは、お酒にも表れている。“自己流”で仕込まれた自家製の果実酒は、他の店では味わえない一品。こがしたカラメルとバナナがホワイトラムと絶妙にマッチした「カラメルバナナ」や、白ワインのサングリア(もちろん赤もある)、レモンチェッロなどなど、いずれもロックで600円と手頃な価格で楽しめる。 気取ることなく、気の向くままに立ち寄れるダイニングバー。ゆったり、ゆっくり、アフター5の時間を楽しんでほしい。 |
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取材・文/+D Style
撮影/永山昌克
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