忘れちゃいけない、タイヤの事実――プロに教わる“タイヤの安全”完結編:+D Style モテるクルマの選び方(2/2 ページ)
車の安全や燃費が気になるみなさん、まずは愛車の足もとから気を配ってみて! だってタイヤの空気は少しずつ抜けるんです。レッスンの結果を見れば、違いは歴然……忘れちゃいけないタイヤの事実をリポートします。
そしていよいよ最後のプログラム、スキッドパッドへ。
スキッドパッドとは、定常旋回ができる円状のコースです。
ステアリングを一定角度に安定させ、スピードを調節しながらコースアウトしないように円形コースを旋回する、となんだか聞いただけではピンとこないトレーニングなんですが、簡単に言えば円形のコースをぐるぐる走るだけ。
簡単そう?!いえいえ、とんでもない!
実はこの路面、ウエットコンディションに設定されています。濡れているんです。おかげで路面はツルツル状態、お風呂のタイルのよう。そこをハンドル切った状態で走るんですから、あっという間にアンダーステア!!
今話題のパンクしても走行できるタイヤ「ランフラットタイヤ」の実験。な、なんとタイヤにドリルで穴、開けてます!!! でもぺったんこになることはありませんでした。こんなこと、やってみたくてもできない実験ですよね。なんかトクした気分
アンダーステアとは、コーナリング中に車が遠心力に負けて、ドライバーが意図するよりも外側へと走行ラインが流れてしまう状態をいいます。コーナーを飛び出してしまう事故のほとんどは、このアンダーステアで起こります。原因はズバリ、スピードの出しすぎ。そこで慌ててハンドルを切れば、今度はハンドルを切りすぎてしまう状態、(オーバーステア)になり、車体が不安定になるか、ひどいときにはスピンをしてしまいます。
さて、スキッドパッドのレッスンでは2種類のタイヤの性能を比較できます。スクールカーは佐藤浩一さんのダンディなCMでお馴染、トヨタのマークX。1台は「ポテンザ RE050」をタイヤにチョイス。言わずと知れたスポーツライン“ポテンザ”の中でも、ウエット路面でのグリップに優れたモデルです。そしてもう1台にはスタンダードなタイヤの「スニーカー」。
ノリやすい私、佐藤浩一バリに眉を寄せて、渋く乗り込みました。気分は敏腕部長です。
まずはRE050から。
ある程度スピードが安定したところで、インストラクターから「もっと踏んでみましょう!」と指示が出るのですが、どこまで踏んでも安定性はバツグン!
さすが雨の多いヨーロッパで鍛え抜かれたスポーツタイヤ。この日の「イマイ・メモ」にも「限界高〜い!!」と殴り書きがしてあったほど。よっぽど踏まないとその限界を超えません。スピードを上げてもタイヤが路面にしっかりと食いつき、イメージした走行ラインを守ることができます。
続いてスニーカーです。
あれあれ?! 踏めば踏むほど不安定に……走行ラインがどんどん外にはみ出して行きます。「もっとスピードを上げましょう!」とのインストラクターの指示に従う私なのですが、踏めば踏むほど、どんどんとラインは外へ……こりゃイカン! と以前の走行ラインに戻ろうとすると、今度はオーバーステア気味に! 後輪がズルっと滑っていくのがわかります。
そこで後輪の滑りだした方向にハンドルを切って調整しますが(この動作がカウンターステアです)、ハンドルの戻しが少しでも遅れてしまうと、クルマの挙動があっという間に乱れてスピンしてしまうことになります。
プログラムが終了したら、バスで教室に戻る前にブリヂストンのテストコースを案内してくれます。ちょっと加速したと思ったら!!バンクを駆け上がっていく〜〜〜!! きゃ〜〜〜!! もっとやって〜〜!! 観光バスのフロントガラスから直前に迫るバンク……お客さん、大歓声
アクセルワークとハンドルさばきでなんとかスピンは免れましたが(っていうと運転が上手いみたいですが、これも氷上ドライブ講習などの“コソ練”の賜物です……てへ)、同じブリヂストン製のタイヤなのに、ここまで運動性能が違うとは、いやはやオドロキです。
スニーカーとRE050では、1本あたり4〜5千円の差があるそうですが、やはりそのお値段の違いは結果に現れるんですね。納得です。
とはいえ、個人的な感想としては、スニーカーでカウンターステアを当てながら走る方が、トレーニングとして面白かった!! あと50周くらいしたいほど!! レッスンを通して一番楽しいプログラムでした。……ただこれは、あくまでもクローズドコースでの感想です。一般道を走るなら、限界の高いタイヤの方がイイに決まっています!
修了式を終え、帰る道々、真剣に考えました。
黒くて丸いタイヤは、1本あたりはがき1枚の接地面でクルマを支えています。
どれだけ高級なクルマに乗っていたって、クルマの安全性能が優れていたって、タイヤのメンテナンスができていなければ安全装備は十分とは言えません。
クルマは命を乗せて走っているのです。それを支えるのはタイヤです。
ボディの美しさよりも、傷よりも、もっと大切なことがある。それを忘れないようにしましょう。
私は、クルマの事故を減らしたい。愛車のタイヤの状態を把握し、ますます安全なカーライフを送ってくださることを祈っています。
関連記事
- 「ブタと燃費」ってどういうこと!?――プロに教わる“タイヤの安全”その3
「ブタと燃費」って言葉、聞いたことありますか? 知っているあなたは、クルマ通か、「タイヤセーフティドライビングレッスン」に参加した人かも。今回も講義から実践まで、いろいろレクチャーしてもらいました! - 第35回:タイヤ以外の安全も――プロに教わる“タイヤの安全”その2
前回に引き続き、ブリヂストンの「タイヤセーフティードライビングレッスン」の様子を紹介しちゃいます。タイヤ以外の安全も学べるこのイベント。なにやら大仏様の頭みたいなヘルメットを渡されて……? - 第34回:縁の下の力持ち!――プロに教わる“タイヤの安全”その1
タイヤはクルマが路面と接地する唯一の部分。走行と安全の性能に大きく影響する所でもあります。今回は、安全知識に加え、車のコントロールをテストコースで安全に学べるブリヂストンの「タイヤセーフティードライビングレッスン」に参加してきました! - 第33回:ドラマティックZoom-Zoom!――新型アテンザフォーラムに参加しました
みなさん! マツダのデザイン、どう思いますか? 私の周りでは「なんかデミオが気になるぅ!」なんて女子トモが増えています。さて今回は、新型アテンザのフォーラムに参加して、Zoom-Zoomな経験をさせてもらいました! - 第32回:乗って分かった“乗り味”の進化!! スマートフォーツーフルモデルチェンジ その2
さて、前回に引き続き新型スマートについて書いちゃいます! スタイルだけでなく、その“乗り味”にもファンが多いスマートですが、さぁ新型はどうなってるんでしょ? 確かめてきました。 - 第31回:時代の波に追いつけ追い越せ!! スマートフォーツーフルモデルチェンジ その1
世界中でモテまくっているスマートがフルモデルチェンジ! 早速、その試乗会に行って参りました。ハンドルを握る前に、まずは“小ささ”が評価されたスマートがなぜ“大型化”したかを探ります。 - モテるクルマの選び方 バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.