表は液晶、裏はE-Ink――ロシア生まれの両面ディスプレイスマホ「Yota」Mobile World Congress 2013

ロシアの新興メーカー「Yota Devices」の両面ディスプレイスマホがMWC 2013にお目見えした。2本指で液晶画面をスワイプすると、その画面がE-Inkディスプレイに転送されるなど、両画面端末ならではの便利な機能を備える。

» 2013年03月01日 16時12分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 一部で噂になっていたロシアの新興メーカー「Yota Devices」の両画面スマートフォンがMWC 2013の会場にお目見えした。この端末は、4.3インチのタッチスクリーンにKraitベースのSnapdragonを搭載し、LTEにも対応するなど、標準的な高機能スマートフォンそのものだが、最大の特徴は本体背面にセカンドディスプレイとしてE-Inkディスプレイを採用した点にある。

 E-Inkは画面の書き換え以外でほとんど電力を消費しないため、時計やSNSなどのアップデート情報といった「とっさに確認したい情報」を、電力消費を抑えながら常に画面に表示したままにできる。MWC 2013のブースで実際に稼働中のデバイスを見ることができたので、簡単に概要を紹介する。

Photo MWCのYota Devicesブースに展示されていた「Yota Phone」のモックアップ。その最大の特徴は本体背面のE-Inkディスプレイ。タッチ領域はカメラのある底面部分だけだが、ここをスワイプすることで次々に画面を切り替えられる

 Yota Phoneの基本機能はJelly BeanベースのAndroidが動作する通常のスマートフォンと大差ないが、その使い方の特徴的な部分は背面のE-Inkディスプレイに集約されている。背面ディスプレイに表示する情報はカスタマイズが可能。さらにE-Inkディスプレイの底面部のみにタッチ可能な領域があり、ここを左右にスワイプすることで次々と画面を切り替えられる。時計やメール、SNSのアップデート情報の表示に役立つほか、電子ブックリーダー的な使い方も可能。前述のようにE-Inkは画面の書き換え以外でほとんど電力を消費しないため、液晶画面がスリープ中でも常に画面を表示し、少ない電力で画面のリフレッシュが可能となっている。この機能を使えば、時間や各種情報のアップデートを確認するのに、わざわざ本体の電源ボタンを押してスクリーンロックを解除する必要もなく、本体を裏返すだけで簡単に確認できる。

Photo 稼働中のYota。E-Inkディスプレイでは時計を表示したり、あるいはコミックを読んだり、Twitterのタイムラインなども表示できる

Photo 本体を側面から見たところ。4.3インチディスプレイでこの厚み。サイズとしては標準的

 壁紙として背面ディスプレイに写真を表示することもできるが、使い方として面白いのが液晶画面の転写機能だ。液晶画面が表示された状態で、2本指を画面の上から下までスワイプすると、その時点で表示されている画面がそのまま背面ディスプレイに転写される。例えばWebページやメールなど、後で内容を確認したいときや、飛行機などのモバイル搭乗券でQRコード入りのメールがあった場合、そのまま画面を転写してE-Ink側に情報を表示させておく使い方が有効だ。特に後者の場合、液晶画面では赤外線スキャナの読み取りがうまくいかないケースがあり、途中で画面が消えてしまうなどの問題があるが、E-InkのQRコードなら常に画面に表示されるので、スキャナに読ませるのもさほど難しくない。一連の動作も非常にスムーズで、現時点でのハイエンドスマートフォンに相当するパフォーマンスを存分に活かしている。

Photo Yota Phoneで面白いのがこの画面転写機能。液晶画面のほうで表示している画面をE-Ink側ディスプレイで表示させたい場合、2本指で画面の上からスワイプすると、その画面がそのまま背面に転写される。QRコードの印刷されたモバイルチケットのように、E-Inkディスプレイのほうがスキャンしやすい画面をとっさに表示するのに役立つ

 このデバイスを開発したYota Devicesはロシアを拠点としており、もともとはWiMAXを中心にブロードバンドサービスをロシア/東欧圏に向けて提供していた通信キャリアだ。一方でモバイルルータを中心に特色ある数々のデバイスを開発することで知られており、今回の両画面スマートフォンで華々しくデバイスメーカーとして世界デビューを果たしたことになる。Yota Devicesビジネス開発ディレクターのSergey Sobolev(セルゲイ・ソボレフ)氏によれば、昨年末に同デバイスを発表して以降、反響が大きいことから、世界展開を検討中だという。日本市場に関する言及はなかったが、欧米を含む世界の主要市場で2013年12月ごろにも発売を開始すると説明している。ありそうでなかなかなかった、ユニークで楽しみなデバイスといえるだろう。

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