BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は虎ノ門にある一坪本屋「小屋BOOKS」を紹介。
小屋BOOKSは一坪の本屋である。とても狭い。だが、その猫の額的空間の中に無限の広がりを感じる。
そんな小屋BOOKSがどこにあるかというと、東京の中心にほど近い港区、虎ノ門だ。ビルばかり立ち並ぶ場所にあらわれた一坪だけの本屋である。「リトルトーキョー」という謎施設の中にあるのだ。
その質問に応えるのは難しい。言ってしまえば元寿司屋のBARなのだが、それだけではリトルトーキョーについて半分も語ったことにはならない。よし。日本語に訳してみよう。小東京……困った。何も進んでいない。
そうだ。リトルトーキョーには“市民”というメンバーがいる。市民というと分かりにくいが、客とボランティアの中間のようなメンバーだ。リトルトーキョーのスペースを皆で相談しながら実行できる割と自由な立場である。どんなことができるか微に入り細に入り紹介しようと思ったが、サイトの紹介文が過不足ない素晴らしい紹介文なので、これを引用したい。
リトルトーキョーは東京の真ん中、
新橋や虎ノ門にも近い愛宕神社の裏にあります。
お寿司屋さんだった建物、空き地、そして細長いペンシルビルを都市に見立てて、自由に自分のやりたい仕事を試しながら参加できるコミュニティです。
市民になると、もう一つの肩書きを持つことができます。
子どものころからやってみたかったことがある方から、新しい仕事をつくろうと考えている方まで、まずは自由にリトルトーキョーで試してください。
もちろんリトルトーキョーは市民にならなくても、どなたでも楽しめる場所です。
「コーヒースタンド」「BAR」「ショップ」「ギャラリー」「イベントスペース」などがあるので、まずは隣の街を訪れるように遊びに来てください。
いろいろな人や働きかたに出会えると思います。
リトルトーキョー公式サイトより
さすが本家本元。過不足ない素晴らしい紹介文である。はじめからこうしておけば良かったんだな。
というわけで、リトルトーキョーが“いろいろな人や働きかたに出会える”場所であることはお分かり頂けたと思う。ならば、そんな場所の中にある本屋「小屋BOOKS」が「働きかたに関する本を売る本屋」というのは容易に想像できるだろう。
リトルトーキョーに集まるような人というのは多かれ少なかれ「働きかた」とか「仕事」であるとかそういうことに興味を持っているわけで、そんな人たちの助けになるような本が一坪の中にずらっと並んでいるのである。
一坪だからといって侮るなかれ。流行りの本から古典的名著、雑誌まで、新刊を中心に古本もごく一部ながら扱い、ここに来れば「働きかた」や「仕事」関係の本で主要なものはだいたい手に入るという素晴らしい品ぞろえなのだ。
『HAB』という本をご存じだろうか。「エイチアンドエスカンパニー」によって発行された本屋とそれに関わる人間に迫った本だ。「HAB」というのはHuman And Bookstoreのことで、BOOKSHOP LOVERとしては最高の本だったので2巻を待ち望んでいるのだが、そのエイチアンドエスカンパニーの松井祐輔氏が開店したのがここ小屋BOOKSなのである。
出版もしながら本屋も営む。その行動力には感嘆するばかりだが、このやり方、これからの本屋において参考にすべき事例ではないだろうか。
それは「本屋を中心にして出版も本屋もやれる範囲で動く」ということだ。内沼晋太郎氏が著書『本の逆襲』で「本の可能性」について書いていたが、もっと身軽に柔軟に本に携わることが本の世界(出版業界ではない)を豊かにすることにつながるように思う。
本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。
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