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2004/05/26 09:52 更新


「今すぐSOAを」── 既存EAIベンダーに引導を渡すBEAのチュアングCEO

「BEA eWorld 2004 San Francisco」が開幕した。BEA創設者のアルフレッド・チュアングCEOは、統合された唯一のSOAプラットフォームであるBEA WebLogic Platform 8.1によって、今すぐSOAに取り組むよう促した。

 米国時間の5月25日、乾季入りしているカリフォルニア州サンフランシスコは、日本でいえば、初春や秋のようなすがすがしい朝を迎えている。この日、「BEA eWorld 2004 San Francisco」が開幕したダウンタウンのモスコーニコンベンションセンターには、早朝からBEA Systemsの熱心な信奉者が集まり、設立から10年という節目を迎えた同社のメッセージに耳を傾けた。

 オープニングのキーノートに登場したBEA創設者のアルフレッド・チュアングCEOは、今回のeWorldを「SOA(サービス指向アーキテクチャ)をデザインし、デプロイしていくためのカンファレンス」と位置づけ、統合された唯一のSOAプラットフォームであるBEA WebLogic Platform 8.1によって、今すぐSOAに取り組むよう促した。

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ガラスのスクリーンをぶち破るというド派手な演出で登場したチュアングCEO


 SOAとは、ビジネスプロセスやその基盤となるITインフラを「サービス」として捉え、再利用したり、新たに組み合わせたりすることで、システムの変更を柔軟に実現できる設計手法。厳しい競争に直面している企業には、ビジネスプロセスをその時々の状況に応じて柔軟に組み合わせて最適化していくことが求められている。

 昨年春のeWorld 2003 Orlandoとは異なり、主力製品のバージョンアップはないものの、チュアング氏は、本拠地ともいえるサンフランシスコで次の10年に向けた同社のビジョン「Liquid Computing」を明らかにした。

 「従来型の硬直化したシステムに対して、BEAは柔軟にそれ自体を変えて順応していける新しいコンピューティングを目指す」とチュアング氏。

 これまで「Project Sierra」というコードネームで呼ばれていた Liquid Computingは、顧客企業に対する調査をベースに、将来BEAが到達したいと考えているビジョンだ。「Enterprise Compatibility」「Active Adaptability」および「Breakthrough Productivity」を構成要素とし、同社が今後開発していくすべての製品にこれらの特性が組み込まれていくことになる。

インテグレーション時代の終焉

 ポイントツーポイントでシステム間をつなぐインテグレーションは、そのサイクルが終わるということはない。そのため、IT支出の大半、時には9割近くをシステムの保守ために費やすハメになっている。

 「もっと賢明なやり方があってしかるべきだ」とチュアング氏。

 BEAでは、XMLをはじめとするスタンダードをベースとし、システムに互換性をもたせることによって、より安価に、簡単に、そして、ITの価値をさらに解き放つことができると考える。彼は「インテグレーション時代の終焉」とし、既存のEAI(Enterprise Application Integration)ベンダーらに引導を渡す。

 チュアング氏は、Webサービス管理の重要性や開発段階から変化を予測しておくことの必要性も強調した。

 「企業のアプリケーションライフサイクルは10年にも及ぶ。われわれBEAは創設から10年を迎えたが、この間の変化をどう予測できるだろうか」と、チュアング氏はこの業界が直面する命題を自らに問い掛ける。

 ダイナミックでビジネスドリブンなアプリケーションは柔軟なだけでなく、変化に対応するスピードも求められる。かつて年単位だったプロジェクトは月単位へとその期間が短縮されたが、チュアング氏は「分単位」の時代に突入するとみる。

 こうしたLiquid Computingのビジョンを実現すべく、製品として開発を進めているのが、「Project QuickSilver」と「Alchemy」(どちらもコードネーム)。QuickSilverの詳細については、あとから登場したスコット・ディッゼンCTOの記事に譲るが、オープンな標準をベースに構築するメッセージングおよびルーティングのテクノロジーだ。BEAは昨年春のeWorld以来、「Convergence」(融合)を掲げているが、今度は「メッセージングとWebサービスのマージ」(チュアング氏)に取り組んでいる。

 「われわれは1998年にJavaをサーバに搭載すると言った。WebLogic Platform 8.1では開発とインテグレーションを融合し、WebLogic WorkshopでJ2EE開発を簡素化すると言った。それらはすべて実現してきた」とチュアング氏。ガートナーが「Enterprise Service Bus」(ESB)と呼ぶ、メッセージングソフトウェアの広範な浸透をにらみ、BEAも着実に手を打った格好だ。

 なお、「すべてのコンピューティングはモバイルになる」というラジカルなコンセプトを基にしたAlchemyは、明日、チーフアーキテクトを務めるアダム・ボスワース氏のゼネラルセッションでベールを脱ぐ。

[浅井英二,ITmedia]

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