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» 2004年06月11日 22時38分 公開

Interview:「中国では政府との関係がこれまで以上に大事になる」とOSDL平野氏

米オープン・ソース・デベロップメント・ラボ(Open Source Development Lab、以下:OSDL)は6月1日、アジア担当OSDLディレクターのポジションに元レッドハットの平野正信氏を迎え、アジア地域での展開を図る考えだ。

[西尾泰三,ITmedia]

 米オープン・ソース・デベロップメント・ラボ(Open Source Development Lab、以下:OSDL)は6月1日、アジア市場でのLinuxの急伸を受け、アジア担当OSDLディレクターのポジションを新設した。同ポジションに就任した元レッドハットの平野正信氏に今後の活動などについてコメントをいただいた。

「年内には中国にオフィスを設立したい」と話す平野氏

ITmedia 今回就任されるまでの経緯を教えていただけますか。

平野氏 何年かLinuxの世界にいて、Linuxの変化を間近で見てきたなかで、私自身がLinuxやオープンソースに対してやりたいことを自問自答したときに、OSDLが行うアジアの地域の取り組みというものに興味を持ちました。折りしもOSDL側もアジア担当のディレクターを求めており、ごく自然な流れで今回の話となりました。

 レッドハットがどうだから、という話ではなく、どの場所が一番自分が貢献できるかを考えた末に自然にこうした流れになりました。

ITmedia Linuxやオープンソースに対して、レッドハットというベンダーからの視点と、OSDLが持つ視点の違いはどのあたりにあるのでしょう?

平野氏 オープンソースやLinuxでのビジネスというのは、一企業がすべてをコントロールするようなものではなく、ビジネスモデルひとつとっても、プロプライエタリなものとは異なります。

 ディストリビュターだけでなく、ベンダー、ソリューションプロバイダーなどがより真剣にLinuxと向き合うようになりましたが、物を売ったり、ソリューションを提供したりという観点ではなく、業界自体をサポートする存在としてOSDLは非常に重要な役割を担っていると思います。

ITmedia OSDLにおいて具体的にはどういったことに取り組んでいくのですか?

平野氏 日本に関しては、高澤(注:OSDLラボディレクターの高澤真治氏)をはじめとするスタッフの尽力により、すでに基盤ができていますので、それらを発展させていくことが挙げられます。アジアという広い枠組みになっているのは、中国を中心にOSDLの存在感を出していくことです。

ITmedia 最初のミッションはどういったものになりそうですか?

平野氏 まず中国にオフィスを設立することです。この計画自体は前からありましたが、まだ達成されていませんので年内を目処にして作業を進めています。ちなみに、欧州に関しても、別の人間が計画を推進しています。ここでオフィスの設立がラボも含むのかどうかといった部分に関しては、まだ未定です。

ITmedia 中国をどのように認識されていますか?

平野氏 中国では、ガバメントリレーションシップとでも表現すべきものが非常に重要となる特殊な国という認識を持っています。

 中国企業は北京の中央政府のほか、上海、広州、香港といった地方政府の戦略に非常に影響を受けてその活動を行う傾向があるようです。そのため、企業とだけ付き合っていくのではなく、何らかの形で政府ともコミュニケーションを維持しないとうまくいかないという事情があります。

 日本などであれば、世の中の動向がはっきりしないと政府も動きづらいと思いますが、中国の場合は、世の中の流れと同時あるいは先行して政府が活動しています。

ITmedia 中国の各地域で大きく違いがあるのですか?

平野氏 そうですね。大まかにいうなら、北京はソフトウェアオリエンテッド、広州はハードウェエアオリエンテッド、上海はその中間といったところでしょうか。各地方都市が競合状態でそれぞれ突っ走っているような状況です。

 中央政府があるという意味では北京が強いともいえますが、上海も昔から商業地でしたので、その強みがあることと、広州や深せんなど、南の地方では海外資本の投下が早く、投資額も大きいなど、それぞれの特徴があります。

 こうした状況ですので、例えば「中国で人気のLinuxディストリビューション」といったような見方は中国の実態を必ずしも正確に表していない場合もあるので、注意が必要です。

ITmedia 中国にオフィスを設立する以外にはどのような仕事がありますか?

平野氏 ご存じのとおりOSDLはメンバー企業に支えられていますが、メンバー企業の本社が米国にあることが多いこともあり、これまでは米国と日本以外の地域への展開が十分ではありませんでした。これをグローバル、私に関して言えばアジアでの展開を図っていくための仕事が中心になります。

 また、アジアへの展開を図ることで、アジアの企業がOSDLのメンバーに加入することも期待しています。中国であれば、現在は2社(Beijing Software Testing CenterとCo-Create)ですが、これがさらに増えることを望んでいます。

ITmedia OSDLで中国以外に注目している国としては、どこが挙げられますか?

平野氏 韓国とインドですね。韓国企業はターゲットが中国に向いていることが多いので日本ではあまり目立たない印象がありますが、韓国製のコンシューマーエレクトロニクス製品は中国に行くと非常に多く目にします。

ITmedia 平野さんに求められているのはどのあたりの能力なのでしょうか。

平野氏 オープンソースにこれまで関わってきた、今までの経験から、各産業界への啓蒙を期待されていると考えています。OSDLへの参加は基本的に企業の決裁事項になりますので、それらの企業で決裁権を持っているような方を上手に説得しなければなりません。

ITmedia 今回のLinuxWorldはどのように感じられましたか? 過去のLinuxWorldに比べると若干人が減ったようにも感じましたが?

平野氏 Linuxがブームの状態から移行し、皆さんが、Linuxを真剣に考えられているためだと思います。私は、まともな方向に軌道修正され、また盛り上がっていくと思いますよ。

ITmedia OSDLが進める作業を端的にいえばどのようになりますか?

平野氏 企業とコミュニティをつなぐ役割でしょうか。Linuxを企業が使うにあたって、企業の"コミュニティ"をきちんと形作って、今までのコミュニティと連携していくことを考える必要があります。Linuxまたはオープンソースをエンタープライズ用途で使おうとした際に、想像したとおりに動かないからといってコミュニティに文句をいうのはお門違いですよね。だからこそ、まず産業界が必要とする機能などを企業がきちんと定義し、それをコミュニティだけでなく、世の中に対して示していく作業が必要となるのです。



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