IT活用には金だけでなく口も出せ?

Forbes主催のCEO向けフォーラムで、IT企業幹部は「CEOはITに投資するだけでなく、IT利用についても再考する必要がある」と呼び掛けた。これは特に欧州のCEOに欠けている姿勢だという。(IDG)

» 2004年06月18日 20時12分 公開
[IDG Japan]
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 ライバル企業によって一敗地にまみれることを良しとしないのなら、最高経営責任者(CEO)――特に欧州のCEO――はITに投資するだけでなく、企業内でどのようにITを利用するかを再考することも必要だ。6月17日にロンドンで開かれたForbes CEOフォーラムのパネルディスカッションで、著名なIT企業の幹部がこのように指摘した。

 BT Groupグローバルサービス部門のアンディ・グリーンCEOは、CEOは単一の顧客の視点をリアルタイムに企業へもたらすITシステムの構築を目指すべきだと語った。

 「これは指導者の問題だ。世界中のCEOやCIO(最高情報責任者)に向けて言ってきたことだが、こうした指導者が顧客中心の見方から離れるのはどんなに早いことか。私はここを懸念している。これは技術的な問題ではなく、企業の指導者の問題だ」とグリーン氏。

 このパネルに参加したMicrosoft EMEA(欧州・中東・アフリカ)支社のパトリック・デ・スメット会長やソフトベンダーMercury Interactiveのアムノン・ランダンCEOも、同じような考えだ。彼らはCEOに向けてITに投資するよう呼びかけたが、よく考え、革新の土壌をつくる広範な計画にしっかりと視点を据えるよう訴えている。

 「ITはまだ、非常に初期の段階にある。だが企業がITを導入するやり方は、相変わらず洗練されていない。企業のトップ幹部は現在、技術を理解してはいるが、効率的なやり方でそれを当てはめていく方法を知らない。率直に言って、現在の情勢はとても厳しいものだ」とランダン氏。

 パネリストは、標準化は重要だと強調し、ビジネスプロセスの自動化を進める必要もあると指摘。さらにCEOは「新技術はどのようなものか?」ではなく、むしろ「どうすれば既存技術と効果的に組み合わせられるか?」といった質問をするべきだという。

 BTのグリーン氏には、CEOに贈る3つの秘けつがある。まずCEOは、ITに時間を使わなくてはならない。とりわけITサプライヤーや企業内のITスタッフと過ごさねばならないと同氏は語る。次に、企業は「ITプロジェクト」を実施するのではなく、プロジェクトを「変える」方向を目指すべきだ。「結果として社員の職務が代わらない限り、ITプロジェクトは決して機能しない」とグリーン氏。

 グリーン氏は3つ目の秘けつとして、こうしたルールの唯一の例外は、企業に柔軟なIPインフラに投資させることだと述べた。「喜ばしいことに、IPインフラには巨額を投じる必要はないと思う。だが、会社まわりでデータを動かす方法を柔軟にすることは必要だ」とグリーン氏。

 Microsoftのデ・スメット氏は、「幹部はITについてどう考えるべきか」を示す一例として同社自身を挙げた。「IT環境を簡素化することが必要だ。例えば当社は、サーバをすべてWindowsに集中させ、メインフレームを取り去った。カスタマイズ版のソフトも使っておらず、すべてパッケージソフトだ。調達にはSAPのソフトを使う。既に持っている情報からさらなる価値を引き出せるビジネスアプリケーションを開発するため、比較的シンプルなソフトを利用している」と同氏。

 Mercury Interactiveのランダン氏によると、CEOが間違えやすいのは、プロセスや品質管理の概念を持たないという点だ。「技術的な見地から見ると、IT運用の社内力学は孤立する方向に向かいがちで、不均衡を招くことになる。IT担当者はネットワークで何が起きているかに気を配る一方、エンドツーエンドビジネスの視点を持たない。CEOはエンドユーザーのところですべてが確実に機能するようにしなくてはならない」

 グリーン氏は、BTでも自社のITプロセスを顧客中心に変えるまで、長い時間がかかっていると話す。「こうした点や、情報へのリアルタイムアクセスの提供が、BTにとって最大の課題だ」(グリーン氏)

 グリーン氏は、うまく技術を導入して、顧客のセルフサービスを軸に据えたビジネスモデルを再構築した企業の例として、小売大手のWal-Mart Stores、Tesco、検索エンジン会社のGoogle、オンラインバンキングサービスのEgg、低料金航空会社のRyanairを例に挙げた。

 「ITはこれまで以上に重要になっている。新たな付加価値を生み出すために技術を利用しなくてはならない」とグリーン氏。新コンセプトの理解と応用という点で、欧州は明らかに米国に遅れをとっていると同氏は言い添えた。

 ランダン氏は、企業の研究室や研究者と、ビジネスマンの間に存在する溝を埋めることのできる新しいCEOの血統が企業には必要だと主張する。これは米国で進みつつあるが、欧州ではまだ欠けている。

 革新の土壌は、CEOの育成支援に非常に重要だとデ・スメット氏。「Microsoftが進めてきたソフト事業を具体的に見ていこう。これまでの取り組みを積み重ね、好循環を生み出している。われわれは、インターネット面の採用においては道半ばでしかなく、革新を進めるのに十分な可能性をまだまだ秘めている」

 デ・スメット氏によると、Microsoftは現在、世界で6億の顧客を抱え、研究開発に70億ドルを投じている。これは製薬会社のPfizerに次ぐ2位の数字だ。「こうした投資は非常に重要だ。米国は官民の両面で欧州よりも多額を投資している。革新を進める上では、枠組みの有効化が重要だ。しかし、それはもっぱらどうやって商業的な面にてこ入れして、総所有コスト(TCO)を下げるかという問題だ」

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