MicrosoftのExchangeが圧倒的なシェアを誇っている中、Stalker SoftwareはMAPIコネクタとダイナミッククラスタといった機能を組み込んだ製品で同市場へ踏み込んでいく。
米Stalker Softwareは先月、国内でセミナーとパーティーを開催した。日本市場にも目を向けようとしているStalkerのCEO、ウラジミール・バテンコ氏に話を聞いた。
同社が扱うソフトウェア「CommuniGate Pro」(以下CGP)はその源流をたどると1991年にMac版がリリースされている。このころの製品はどちらかといえばGUIの部分を作りこんだものであった。同社はもともとOS周りの開発に強い部分があったが、1997年にAppleが「Rhapsody」を発表したあたりから、パワフルで信頼性のある製品を作る、という目標に向かい、大規模なシステム向けの機能を盛り込みはじめ、かつプラットフォームもMacに限定せず、UNIX、Linux、Windows、Mac OS X、AS/400などマルチプラットフォームへの対応を進めた(現在は31種類だという)。
CGPで実現可能なことを一言でいうなら、メッセージソリューションといえるだろう。細かく見れば、SMTP/POP/IMAPなどのサポートのほか、統合Webメール、カレンダリング/スケジューリング(Outlook、Web、iCal、vCalを経由)、LDAPディレクトリ、メーリングリスト、スパム/ウィルス保護などが実装されおり、他のメールサーバソフトと比べてもフルな機能を提供しているといえる。
また、CGPの大きな特徴とも言えるIMAPプロトコルの拡張機能であるxIMAP機能を備えていることで、MAPIコネクタを介してCGPサーバとの通信を可能にしている。この機能により、Exchangeから移行したとしてもOutlookのインタフェースからこれまでと変わらないような機能を利用できる。
「肝心なのはMicrosoftの開発者が想定している動作と同じものを再現する必要があるということだ。ということはバグがあればバグも同じように作らなければならないんだ(笑い。私としては早く大手のベンダーがExchange互換のソフトを提供し、そのような選択肢があるのだと市場に知らしめてほしい」(ブテンコ氏)
CGPのもうひとつの特徴は、大規模なメッセージングシステムで効果の高い独自のダイナミッククラスタアーキテクチャを採用している点である。
同アーキテクチャでは、複数のフロントエンドサーバおよびバックエンドサーバで構成され、共有ファイルシステム(NASまたはCFS)上のドメインデータやアカウントデータにアクセスする。フロントエンドでは、メールのリレーに関する処理やSSL暗号化/復号化を実行し、バックエンドサーバをDoS攻撃などのTCP/IPアタックから保護することが可能だ。また、ロードバランシングとサーバリダンダンシーの機能も実装しており、システムの拡張も無制限かつ動的に行うことができるようになっている。
処理速度に関しては、前述のクラスタ機構と、独自のアカウントレベル同期プロトコルが採用されていることで、ファイルロックが起こらない仕組みとなっている。
通常、電子メールなどはI/O要求が多く、ファイルアクセスプロトコルによっては、OSとファイルシステムレベルのロッキングが原因で処理が不安定になることがあるが、それらを解消しているのだ。
エンタープライズ市場でのシェアを見ると、MicrosoftのExchangeが圧倒的なシェアを誇っているが、そんな中で同社のソフトは「MAPIコネクタ」と「ダイナミッククラスタ」といった競合他社が実現していない部分をいち早く製品に組み込むことでExchange Serverからの移行を考えているユーザーにとって魅力的な製品となり得る。
なお、現在の最新バージョンは先月末に発表され、基本的なSIP機能やVoIP、Windows Messengerなどへの対応を行った「4.2」だ。このバージョンでSIP機能などに対するフィードバックをユーザーから得ることで、11月にはそれらの機能を洗練させたバージョン5.0が登場予定だ。
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