強い企業はみんな入れている? ――コンテンツ管理システムの効果(2/2 ページ)

» 2004年08月30日 12時10分 公開
[山下進一,日本ステレント]
前のページへ 1|2       

 その理由の1つとして、CMS導入が、一筋縄ではいかない奥の深い取り組みであることが挙げられる。導入するだけでコンテンツ管理が万全になるわけではない。業務に顕著な変化も現れない。費用もそれなりに必要だ。また、システムが社内に浸透するまでの期間も考慮しなくてはならない。

 したがって、他社が利用している、高機能といった理由だけで製品を選択するべきではない。コンテンツのほとんどは一般業務から発生するもの。そのため、CMSは、日々の業務の延長線上で利用できなくてはならない。どんなに機能が優れていても、一般的なユーザーが使いこなせなければ、業務を担う情報システムとして定着しない。結局は、大した効果も発揮しないまま、償却期間を迎えることになってしまうかもしれない。

製品の選択は慎重に

 また、目先の問題にとらわれて、低コストで機能が限定されたCMS製品を導入するとどうなるか。確かに、その時点で抱える問題点は解消されるかもしれない。初期コストも抑えられる。

 ところが、実際に利用すると、「欲しい機能」が別に見つかったり、他のシステムとの相互連携が必要になることもある。初期導入時に、機能の拡張や負荷分散まで視野に入れておかないと、こうした拡張要件や変更に上手く対応できなくなってしまう。結局は、想定よりも膨らんだ時間やコストの負担に泣かされるケースも多い。また、部分最適の考え方で構築された小さなシステムが、部署や部門の数に応じて増えることで、全体をメンテナンスすることがますます難しくなってしまうのだ。

 どんなに素晴らしいシステムでも、導入するだけではその機能を十分に生かし切れない。かえって仕事を増やしたり、全く利用されない機能がROIを低下させ、システムを「高い買い物」へと押し下げてしまうかもしれない。

CMS導入を成功させるために

 コンテンツ管理を成功させるためのポイントは、従来のプロセスを見直し、社員に資料や文書を自ら管理する習慣を持たせることにある。これは、最近騒がれているコンプライアンスにもつながっており、個人がそれぞれ管理の意識を持つことが基本になる。

 したがって、まずは従業員の意識改革に積極的に取り組まなくてはならない。それを進めるために、業務プロセスを見直し、日々の仕事のやり方に反映させることも必要だ。

 また、コンテンツ管理が単なる文書管理とは異なることも認識するべきだ。コンテンツは情報であり、常に変化していく可能性がある。言い換えると、作成されるコンテンツはきちんと管理され、適材適所で利用され、次のコンテンツの源になることが望ましい。それは、企業の中を駆け巡る血液であり、CMSはそれを循環させる心臓のようなものだ。情報という「血液」を体の隅々まで行き渡らせることが成功の秘訣になる。

コンプライアンスとガバナンスへの対応

 話は変わるが、今後CMSが普及すると、紙データは消滅すると考えるだろうか? データを紙で持っていた方が賢いケースは常にあるため、実際には考えにくい。ただし、紙データを扱うシステムと、電子データを扱うシステムの統合が急速に進んでいるのも事実だ。背景には、企業内コンプライアンスとガバナンスへの意識の高まりがある。

 個人情報や企業業績などの機密情報の漏洩は許されない。また、投資家向けに公開する決算情報や監査情報などに、キメの細かいセキュリティ施策を適用することも求められている。社外への責任問題が絡む場面では、紙データと電子データに切り分けること自体に意味がなくなる。企業は、情報の漏洩や改ざん、隠匿といったリスクから目を反らすことはできない。

 だが、セキュリティに意識を高めるうちに、ユーザーをあまりセキュリティで縛りつけ過ぎるのも本末転倒だ。それでは、情報を共有し、再利用するというCMS本来の役割が果たせなくなってしまう。

 CMSは、効率よく利用することで、コンプライアンスを含めたさまざまな問題をユーザーが意識することなく吸収してくれる。全ての情報をしっかりと管理し、適切な情報を適切な相手に公開していくという考え方が、今後企業が情報管理に取り組む際のカギになる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ