マルエツの実証実験に見るRFIDの技術的課題特集:RFIDが変革する小売の姿(2/2 ページ)

» 2004年09月10日 23時24分 公開
[怒賀新也,ITmedia]
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 ここで、ICタグの読み取りが不安定になる素材や、システム的な問題点について整理してみる。

金属と水に要注意

 ICタグをリーダ/ライタが読み取るときに苦手とするものは金属と水。さらに、電気・電子機器の電源があると干渉して正確に読み取れないことがある。

 例えば、RFIDシステムの周囲に、エレベータやモーターなどの電子機器の電源、金属性のパイプや棚、液体容器などがあると、リーダ/ライタがICタグを読む際の精度が落ちる。また、他のリーダが周囲にあると、相互干渉を起こし、通信距離が落ちることがある。これらは運用面での課題として認識されており、それぞれの利用環境や、「用途ごとの運用ノウハウを蓄積させることで打開できる」(流通システム開発センター)という。

読み取る向きにも気を使う

 また、ICタグがリーダに対して、一様の向きにない場合も、読み取り精度が落ちる場合がある。そのため、ICタグを貼る場所を予め決めておくなど、「運用でカバー」する場合も多いという。一方で、技術的な対応策としては、3次元読み取りアンテナ構造の適用が想定されており、実際の成功事例も出てきている。

金属面への貼付

 金属面にICタグを貼る場合も、13.56MHzなど、低周波数のタグでは読み取りが困難。

 この問題には、金属対応タグを利用する。現状では、通常面への貼付と比較した場合、読み取り距離はおよそ半分になってしまうが、「この先2年程度で、同等レベルの距離を確保できる。」(流通システム開発センター)という。ただし、タグの単価は割高になる。

システム形態

 さらに、EPCシステムのように、サーバでデータを管理するシステムを構築した場合、リーダ/ライタで読みこんだICタグの情報を保存したパソコンと、インターネットを介してつながるデータベース間の通信速度も、全体のパフォーマンスに影響を与える。

 インターネットでつながる中央サーバなど、データベースを置く場所の設計で、処理速度が大きく変わってくる。導入の際に、利用者を含めて念入りに検討するべき問題だ。

無線LANの電波干渉

 さらに、2.45GHz帯を利用すると、既存の無線LANシステムと電波干渉を起こし、相互に影響を受ける場合もあり、事前に調整しておくべきだ。医療機器などへの影響も、今後の調査が必要と考えられている。

 このように、RFIDシステムを実際に導入するに当たっては数え切れないほどの問題がある。だが、課題はこれだけではない。たとえ、読み取り率の問題をクリアしたとしても、ICタグに振られているコード体系が異なっていたら、システムとして利用できない。次回は、コード体系をはじめとしたRFIDにおける標準化の問題を取り上げる。

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