既存資産から新たなアプリケーションを――米Intersystemsの「Ensemble」

米Intersystemsは、レガシーシステムを含め、企業のさまざまなアプリケーション同士を統合するプラットフォーム「Ensemble」を提供している。米国から来日した同社の製品戦略担当バイスプレジデント、グラブシード・グラブシード氏に話を聞いた。

» 2004年09月24日 19時28分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 処理速度の速さを特徴とする多次元データベース「Cache」の提供で知られる米Intersystems。同社は、レガシーシステムを含め、企業のさまざまなアプリケーション同士を統合するプラットフォーム「Ensemble(アンサンブル)」を提供しており、10月には日本語版も発表される予定になっている。

 Ensembleは、アプリケーション間を統合する機能としてはいわゆるEAIツールにも分類できる。だが、企業に導入する際の目標を「コンポジット・アプリケーション」や「ビジネス・アクティビティ・モニタリング」など、既存システムを利用した新たなアプリケーションの構築においている点ではコンセプトが異なっている。Ensembleについて、米国から来日した同社の製品戦略担当バイスプレジデント、グラブシード・グラブシード氏に話を聞いた。

「導入を検討する企業のプロジェクトに、Ensembleとともに社員も2週間無償で派遣し、製品を知ってもらうこともある」と製品への自信を話すグラブシード氏。

 グラブシード氏はEnsembleと他社EAIツールとの違いについて、「他社はさまざまなコンポーネントをつなぎ合わせてEAIツールとしてパッケージ化している場合が多いが、Ensembleは最初からフル機能を組み込んだ新製品として開発されている」と話す。EAIは一歩間違うと「つながればいい」という場当たり的な発想になりがちだが、同製品では、オブジェクト指向をベースに、まずプラットフォームありきでアプリケーション統合を行うことができるという。まずアプリケーションありきでシステムの連携を考えるEAIとはアプローチが逆になっている。

 現在、企業のシステム開発は、ERPによるいわゆるビッグバン導入よりも、既存のアプリケーションを生かして再構成する形態へとトレンドが移りつつある。これは、業務プロセスの最適化を既存のシステムを生かして実現するコンポジット・アプリケーションが業界のキーワードとして挙げられていることからも理解できる。

 さらに、同氏は、異なるアプリケーション間を横グシ状に統合することで、企業内のデータをリアルタイムに連携させ、システム側から常にビジネスを監視する「ビジネス・アクティビティ・モニタリングへとアプリケーション構築の形態が発展していく」と話す。企業は、末端の情報も一貫して統合されたデータプラットフォームを構築できるため、ビジネスにおける細かい変化にすばやく気づき、対応できるようになる。

 Ensembleの基盤になっているのは「Universal Business Integration Platform」と呼ばれる技術。これは、既存のアプリケーションを利用して最終的な情報システムを構築する際に、アプリケーション間のデータモデルや技術の違いを吸収し、データを含めたスムーズな連携を実現するためのベースとなる。

 つまり、Universal Business Integration Platformというレイヤーを介すことで、開発環境やデータモデル、実行および管理環境まで1つに統合することができるわけだ。これを実現させているEnsembleの技術として同氏は、組み込みアダプター群、ビジネスプロセスのモデリング技術、クロスアプリケーション・インデクシングなどを挙げた。提供されているアダプターは、BEA Tuxedo、DB2、i2、Oracle、SAP、Sybase、Lotus Notes、SQL Serverをはじめ、多岐に渡っている。

 また、同製品では、アプリケーション間を統合する際の開発環境を選ばないことも特徴になっている。Javaや.NETなど、特定の環境に依存しておらず、多くの開発言語に対応できるため、結果的に、開発時間の短縮とコストの削減を図ることができるとしている。

 海外では、ブラジルのPetroleum、米フロリダ州などが採用。日本企業でも既に日本通運が導入しており、国内の海運システムとレガシーを含めた物流システムを統合した。日本通運で利用されていたアプリケーションは、DB2、MUMPS、Cacheなど。同社はSOAPを使ったWebサービスで世界に分散するシステムを統合する予定となっている。

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