日本人の「匠」が生きる、HDDからのデータ復旧サービス(2/2 ページ)

» 2004年11月15日 09時00分 公開
[柿島真治,ITmedia]
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 「物理的な損傷といってもさまざまなケースがあります。あまり詳しくはお話しできませんが、たとえばハードディスクのヘッドが損傷しているような場合、ヘッドを交換してしまうんです。またディスクに傷が付いている場合、傷の付いている部分だけを除いてディスクを読み込むような特殊な制御を行ってデータを読み込みます。このような部分はケースバイケースになりますが、私どもはこれまでやってきている実績も含めてノウハウの蓄積もあり、さまざまな方法で復旧を行います。ちなみに当社に持ち込まれるハードディスクの8割は物理的な障害ですね」(浜田氏)

 「熟練した技術者になるとハードディスクの発する音で、どこに問題があるのか、ある程度分かります。また、クリーンルーム内でハードディスクを開けてディスクアクセスするときのヘッドの移動の仕方を見ていると、ディスク上のどの辺りの位置に読み取りエラーがあるのかも分かります。これは余談ですが、当社はアメリカのオントラック社と提携してこのサービスを行っていますが、このような物理障害に関してはアメリカより日本のほうがデータ復旧の確率が高いんです。やはりこの辺りは日本人の『匠』の技術が生きているんではないかと思います(笑)」(松尾氏)

 論理的な障害に関しては、障害が発生したディスクを復旧作業専用のワークステーションに接続し、いったんワークステーションの作業領域にディスク内部の生データをすべて読み込む。その読み込んだデータをもとに作業を行うため、もとのデータを壊すことはないそうだ。

 また、いったん読み込んだデータを復旧する際は読み込んだデータを解析するツールを利用して作業を行うが、この作業においても最終的にはディスクから読み出したデータの中でどこが有効なものなのかは、人間の目で確認を行う場合が多いという。アメリカのオントラック社に持ち込まれた日系企業のディスクの復旧作業において、日本語の2バイトデータを扱った経験のほとんどないアメリカの技術者では正常にデータ復旧ができず、最終的にワイ・イー・データに持ち込まれたケースもある。このことからも、技術者の経験とノウハウの重要さは分かるだろう。

 オントラックのサービスの特長は、データ復旧の作業をワイ・イー・データの社内で行うことで、迅速な診断と復旧ができるという点だ。持ち込まれたり送られてきたメディアは、同社内で診断と復旧を行う。このため、障害の調査を行って復旧できるデータの内容を提示するまで平均1.7日、復旧作業に0.8日という短期間でのサービスが可能だという。

 現在、データ復旧のサービスを行っている会社は国内にいくつも存在するが、そのほとんどは提携している米国企業などにメディアを送り、作業を行っている。そのため、データを復旧するまでに3週間ほどかかる。しかも、国内ではメディアの状態について把握することができないため、米国での調査後、結局データの復旧ができなかった場合も多々あるということだ。

 すでに述べたようなノウハウと高い技術力から復旧の確率も高く、実際に作業を行う前に復旧が見込めるファイルの一覧を提示していることもあって、重要なデータを確実に復旧したいという依頼者からの評判は高いそうだ。

 また、論理的な障害の場合は、なまじディスクが読めてしまうことから、ユーザーが自分でデータを復旧しようとしたために、復旧の障害になることが多いという。確実なデータ復旧を望む場合はデータが破損していることが分かった時点で、それ以上触らずに速やかに復旧サービスに持ち込むほうが良いとのことだ。


 システムを構築する際、「いかにデータを破損しないようにするかということを考えても、データが破損してしまった時のことは考えていない。または、データが破損するというケースを考えるということ自体、システムが不完全であることを意味するのでタブー視する」意識も存在する。

 しかし、万が一でもデータの破壊が起こり、こうむる被害を考えた場合、データ復旧サービスを利用することを考えておくべきであろう。できる限りデータの破損が起こらないシステムを構築するのは当たり前として、万が一データが破損してしまった場合も、速やかに対処できるようにデータ復旧サービスを利用する。これがこれからのシステムの運用ノウハウであろう。

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