特集
» 2005年02月14日 08時00分 公開

個人情報を読み解くキーポイント:最終回 委託先の監督をどこまでするか? (1/4)

個人情報を読み解くシリーズ最終回は、これまでの法的解釈と異なる「委託先監督責任」について、その注意点を解説する。

[牧野二郎(牧野総合法律事務所),ITmedia]

委託先監督とは何か

 これまで委託先に関しては、請負や委任といった法的解釈で終始しており、原則的に相手方の注意義務に依存するのが基本となってきた。

 従って、これまでの委託契約の基本概念は、いかにリスクヘッジをするか、ということであって、発注者は受注者サイドに責任を負わせ、自らは金銭支払い義務のみ負担するものとした。委託元(発注者)が、受託者(受注者)に対して、何らかの関与をした場合には、注文者の指図によるなどとして責任を負わされることにもなるので、可能な限り関与しないものとされてきた。流行語にもなったが、「後は任せた」という関係で、「その後は当社は責任を負わないので、十分注意してくれたまえ」というわけである。

 個人情報保護法が制定される前、京都宇治市で大量の住民基本台帳記載情報の漏えい事件が発生し、その法的判断がなされたが、そこでもすでに委託先監督責任は判断対象となっていた。宇治市サイドは、自らが雇用したものの事故ではなく、委託契約先のものなのだから、もっぱら請負人が責任を負うべきで、宇治市としては法的責任はないと主張した。この主張は従来の法律構成を踏まえた発想であり、別段おかしなものもではなかった。再委託先の雇ったアルバイトの管理など、逆立ちしてもできるわけがない、といった点も一定の合理性のある話であった。

 しかし、裁判所は一貫して宇治市の指揮監督責任を明確に指摘したのである。すなわち宇治市が管理していた住民基本台帳は、宇治市が責任を持って管理監督すべきものであって、その処理を外部に委託するときは情報の管理を徹底し、業務内容に対しても指揮監督することができるわけだから、当然そうした監督が求められるというのである。

 確かに外部に持ち出させない、市庁舎の中で作業させる、持ち出しには厳格な制限と事故防止を図るといったような監督は可能であった。実は、直前までそうした管理をしていた事実があり、最終段階で仕事が間に合わないため例外的に持ち出したという事情もあったようである。こうしたことから、指揮監督が可能であったにもかかわらず、これをしていないということが問題とされたのである。結局、裁判所は宇治市の監督責任を肯定して、民法715条の使用者責任を肯定し、市に対して損害賠償義務を認めたのである。

委託先監督の責任

 この法律では、「発注者は委託先を監督しなければならない」とした上で、必要かつ適切な監督措置を実施することを求めている。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -