「SAN対NASという議論はもはや影を潜めている。むしろSymmetrixを使うか、Filerを基幹系で使うかで判断される」と話すNetApp。同社は、NASを超えて基幹ストレージを目指す。
専業ベンダーによる売上シェア向上が目立ちはじめてきたストレージ業界。最近のIDC調査を見ると、その傾向が見てとれる。ストレージの巨人EMCと、NASと呼ばれるアプライアンス型ファイルサーバで市場を切り開いてきたネットワーク・アプライアンス(NetApp)が元気なのだ。
EMCは近年、ソフトウェア重視の姿勢をとり始めているものの、今後、両社がしのぎを削る機会は増えていく。これまではハイエンドのEMC、ミッドレンジのNetAppという一種のすみ分けがなされていたが、ミッドからローエンド市場に対する進出を激しくしている。一方、ハイエンドからローエンドの全てのセグメントでのNAS市場で優位に立つNetAppは、さらなる成長を目指し、基幹ストレージへと攻め上ろうとしている。
シンプリファイ。NetAppは創業以来、優れた機能を簡便に使えるストレージシステムを提供することに努めてきた。1992年のNetApp創業当時、市場ではSun MicrosystemsのワークステーションをNFSファイルサーバとして利用することが多かった。しかし、それは高価なうえ、設定が複雑だった。
この常識を打ち破ったのが、NetAppのNASアプライアンス「Filer」だった。その当時、コンパクトさとあまりの簡単さに「トースター」とのあだ名が付けられたほどだ。
まだファイルサーバとしてのイメージが強い同社だが、米国などではミッションクリティカル性が非常に高い基幹システムのストレージとしての採用も進むという。NetApp創業者の1人、ジェームズ・ラウ氏と、ワールドワイドセールス担当エグゼクティブバイスプレジデントのロブ・サーモン氏に聞いた。
――NetAppは、シンプルなNASアプライアンスという発想で、市場を切り開き、成長させてきました。ラウさんはデーブ・ヒッツ氏とともにNetAppを創業したわけですが、「シンプル」という発想の原点はどこからきたのでしょうか?
ラウ 当時、Cisco Systemsがネットワークの世界でやってきたことと、同じ発想に立っています。Ciscoは、単純で信頼性の高いネットワークに特化したデバイスを生み出しました。まさにこれと同じことをストレージの世界で行おうとしたのです。
というのも、いろいろな情報が電子化されてくるようになれば、次にくるのは、データを格納して管理するデータストレージへの需要の波です。ちょうどネットワークの世界で起きたのと同じ需要が、データストレージにも起こるだろうと考えたわけです。
実は、単純性を追求すれば信頼性は向上します。矛盾するように聞こえるかもしれませんが、私たちはここに着目しました。システムの障害を調べてみると、8割ぐらいがソフトウェアの障害です。この障害がなぜおこるかといえば、コードが持っている複雑さに起因しています。これを単純にしてしまえば、信頼性は向上するというわけです。
この思想の結果、NASと呼ばれる市場を作り出すことができました。私たちが製品にあえて「Filer」と名付けたのは、コピーの世界に「Copier」というものがあるように、この市場でのリーダーである自覚を表そうとしたからなのです。(編集部注:Filer=ファイルの削除・コピー・移動といった操作を簡単にするプログラムのこと)。この名前がNetAppのすべての機能を体現しているのです。
――現在、このエリアはコモディティ化が進んでおり、NetAppと同じように安価な製品が出回り、各社は同じくシンプルな機能であることを売りにしています。
ラウ 私たちの強みは、コモディティ化したハードウェアの上で、すべての機能をソフトウェアで果たすというところにあります。ソフトウェア機能で私たちは顧客の要求に応え、ソリューションを提供してきました。そのソリューションとしての価値が、顧客の要望に見合うために、顧客はNetAppを選択してきました。顧客は私たち製品に意義を見出しているのです。
昨年ニューヨークでCEOのダン・ウォーメンホーベンがお話しましたが、私たちの成長のポイントは、常にテクノロジーイノベーションを進めてきたことにありますが、さらに重要なことは、いかに顧客の要求に応えて行き続けるか、を考えてきたことです。
サーモン 確かに競合他社もNAS製品を投入し、市場に参入してきていますが、それは大歓迎というものです。6、7年前を振り返れば、市場にはNetAppしかおらず、ニッチなマーケットでした。にもかかわらず、現時点で競合がこんなに参入しているということは、顧客の中でNASの導入需要が高まっているからになりません。
その中で、NetAppがマーケットリーダーであり続けているのは、私たちの製品がローエンドからハイエンドまで、すべて同じアーキテクチャで提供しているためなのです。顧客はシステムを拡張しようとしたとき、自在に拡張することが可能です。
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