コンプライアンス支援も視野に、サンとNRIがアイデンティティ管理で協業

サン・マイクロシステムズと野村総合研究所は、企業向けのアイデンティティ・マネジメント分野に関して協業することを明らかにした。

» 2005年03月18日 18時23分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 サン・マイクロシステムズと野村総合研究所(NRI)は3月18日、企業向けのアイデンティティ・マネジメント分野に関して協業することを発表した。サンのアイデンティティ管理ソフトとNRIのコンサルティングサービスやノウハウを組み合わせ、統合されたアカウントに基づき、必要に応じて必要なリソースを提供できる基盤を提供していくことが狙いだ。

 電子メール、グループウェアに経費清算システム、ERP……今の企業システムを見渡してみると、システムごと、部門ごとにアカウントがばらばらに割り当てられ、運用されているケースが多い。この結果、ユーザーは複数のアカウントを使い分けなければならないし、管理者側は運用の手間やコストに悩まされる。休眠アカウントの悪用というセキュリティリスクも生じるし、人事異動や組織変更にともなうスピーディなリソース/サービスの割り当ては困難だ。

 こういった状況を解決するため、業界各社が提示しているアプローチがアイデンティティ・マネジメント(アイデンティティ管理)である。

 ここでは、シングルサインオンシステムで強調された「ユーザーの利便性の向上」「運用コストの削減」といった側面に加え、必要に応じて柔軟にサービスを許可する(あるいは逆に利用を制限する)アクセス制御や、アカウントの生成―変更―消去というライフサイクル全体にまたがって権限の割り当て/管理を行うプロビジョニングなども重要な要素となる。

 サンとNRIは今回の協業を機に、これらの要素を網羅したアイデンティティ・マネジメントの実現に向け、協力して企業向けに製品およびサービスを提供していく計画だ。多くの取引先や関連企業を抱える大手企業を中心に販売する方針で、初年度10億円程度の売り上げを見込むという。

 具体的には、サンのLDAPサーバ「Sun Java System Directory Server Enterprise Edition」のほか、Liberty仕様をサポートした「Sun Java System Access Manager」「同Identity Manager」に、NRIのノウハウを生かしたコンサルティングサービスを組み合わせて提供。Java関連のシステムだけでなく、Active DirectoryベースのWindowsシステムやメインフレームにまたがるアイデンティティ管理の枠組み作りを支援する。

 さらに、相互運用性や新製品の機能検証などを協力して進めるほか、コンプライアンス支援や監査という側面からも、アイデンティティ・マネジメントを促進していく方針だ。

 米企業改革法(SOX法)やHIPPAなどの業界ガイドラインに対するコンプライアンスは、米国ではもっとも注目されるトピックとなっている。日本においても「Sun Identity Auditor」といったサンのコンプライアンス/監査製品を検証し、国内の制度や事情に合ったコンプライアンス強化に取り組む方針だ。

ITだけでは実現できない

 アイデンティティ・マネジメントは、古くて新しい課題だと言えるだろう。サンのほかにもIBM、ノベル、HPなど多くのベンダーが製品を提供してきたが、日本企業の実情を見ると、それほどこのコンセプトが浸透しているようには見えない。

 残念ながら、そもそもITシステムがどのようになっているかという現状把握すらできていない状態も多いと述べたのは、NRIの佐々木慶秀氏(基盤ソリューション事業本部 システム商品事業部 グループマネジャー)だ。「今、自社のシステムをどんな人が使っており、ID体系がどのようになっているかという情報を集約できている企業は、あまり見たことがない」(同氏)。

 アイデンティティ・マネジメントはこの部分に有効だという。「アイデンティティ・マネジメントとは、システムを利用するユーザーと、利用されるシステムやサービスの関係を明確にすること」(佐々木氏)。

佐々木氏 「アイデンティティ・マネジメントという言葉を日本に広げたい」と述べた佐々木氏

 逆に言えば、ただIT技術や製品を導入してアイデンティティ・マネジメントを実現しようとしても、うまくいかない可能性が高いとも述べている。

 「『1人に1つのID』は、簡単なようで意外と実現が難しい。実現に当たって『これが正解』というものがあるわけでもない。おのおのの企業のあり方や職制、考え方などを踏まえて進めていく必要がある」と佐々木氏は述べ、アイデンティティ・マネジメントを運用するための制度やプロセス、人も含めて考えていく必要があると強調した。

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