有機農業の成長に役立つオープンソースMetaDot

社内イントラネットが誰にも利用されないで衰退することは珍しくないが、Organic ValleyのMetaDotイントラネットは「評判になるほどの成功」を収めた。 その一部始終を探る。

» 2005年04月30日 23時43分 公開
[Tina-Gasperson,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 Organic Valley農業協同組合は、組合員の農業主にWebサイトと電子メールのサービスを提供していたが、共同作業と連絡をもっと密にするために企業型のイントラネットを是が非でも必要としていた。そこで登場となったのが、オープンソースのMetaDotプロジェクトだ。

 Organic Valleyの従業員と組合員が参照する随一の場所として、これがphpWebSiteに代わって導入された。現在、オープンソース・ソフトウェアに親しんだ同組合は、オープンソースによる代替ソリューションが他のソフトウェア・ジレンマの回答になりうると気が付きつつある。

 Organic ValleyのIT責任者ジョージ・ネイル氏によると、MetaDotのオープンソース・イントラネット・ポータル・ソフトウェアのおかげで、従業員は1つのコミュニティとして活動できるようになったという。Organic Valleyは、ウィスコンシン州La Fargeに本部を置く農業共同組合であり、20州689の農場が参加し、従業員350人を抱える。事業は急成長中で、2002年に5000万ドルだった売り上げは2003年に1億5600万ドルに達した。

 以前にOrganic Valleyで共同作業に使っていたphpWebSiteは、順調に機能していた。だが、イントラネット導入を求める経営陣からの圧力は増すばかりだった、とネイル氏は振り返る。「イントラネットは欲しいが、構築する作業には関わりたくない、という方針がネックでした。技術はどうでもよく、とにかくコンテンツが目的だったんです」

 350人のスタッフがさまざまな部署で業務に携わること、そして定型文書、スケジュール、カレンダー、メモ、グラフィックスなど、コンテンツが多岐に及ぶことがわかっていた。必要なソリューションは、技術にうといスタッフでもすべての情報を簡単に作成、管理できるので、すべての負荷がIT部にかかることにはならない、そういったものだった。なおかつ、オープンソースのソリューションでなければならない。Organic ValleyのサーバはSUSE 9とLAMPで稼働しており、ネイル氏はオープンソース・ソフトウェアの機能と経済性が気に入っていた。「組合の所有者は大勢の農家なんです。見えないものに大金を費やすことは歓迎されませんね」

 いくつかの候補を評価するにあたって彼が着目したのは、基本機能、コミュニティからのサポート、有償サポート・オプション、「会計屋」に一定レベルのセキュリティを提供する機能などだ。また、グラフィック・デザイン部の手を借りなくても、IT部で簡単な標準ツールとスタイルシートを使ってイントラネットを設計できるソリューションが必要だった。グラフィック・デザイン部は、一般向けのWebサイトとOrganic Valleyの宣伝資料の作成で忙しいからだ。

 勝ち残ったのが、MetaDotだ。製品が決まったので、それから各部署の「コンテンツ発行者」を特定し、適切なコンテンツを識別して投稿できるように訓練するため、かなりの時間をネイル氏は費やした。文書の重要性に応じて異なるセキュリティ・レベルを割り当てられるところまで発行者を教育したいと、ネイル氏は望んでいる。従業員は個人ページを設定し、利用できる情報を好みのスタイルで配置できる。天気予報モジュールやRSSニュース・フィード、外部サイトへのリンクなどを含めることも可能だ。

 このような機能を追加できることがスタッフの意欲を刺激すると、ネイル氏は言う。社内イントラネットが誰にも利用されないで衰退することは珍しくないが、Organic ValleyのMetaDotイントラネットは「評判になるほどの成功」を収めた。

 「なんらかの告知があるときは、Word文書をメールに添付するのではなく、イントラネットに投稿し、そこへのリンクを送信するようにしています」

 「イントラネットを使って、有機農法の業界やOrganic Valleyが提供する違いについてスタッフを教育しています。FAQ、人事フォーム、収益の情報があります。広告部は、以前はプレスリリースを外部Webサイトに投稿してましたが、従業員は誰も見ませんでしたね。現在、プレスリリースはイントラネットにも投稿されます。イベントの予定、カフェテリアのメニュー、トレーニング情報と要望、内部レポートへのリンク、経理部の手続きなどがあります」

 「社内の電子掲示板のようなものです。本物の掲示板にピンで小さい紙を留める代わりに、本物の資料、利益、作業プロセス、ヘルプ・システムを参照する場所を提供しています」    

 「内部コミュニティがかなりできました。オープンソース・コミュニティが、ソフトウェア機能の使い方に関して役立つのとよく似ています」

オープンソース・ソフトウェア利用の拡大

 オープンソースを全社に浸透させることにネイル氏は前向きだが、プロプライエタリ・ソフトウェアは、Windowsデスクトップ、SQL Serverデータベース、Exchangeサーバという形でOrganic Valleyにまだ大きな地位を占めている。これが変わる見込みはあるのだろうか。「引き続き状況をよく見ていくつもりです。あまり使われてはいませんが、Microsoft Officeの代わりにOpenOffice.orgを推奨しています。デスクトップを使うほとんどのユーザーに十分な互換性がありますよ」

 「オープンソースの世界の進歩には驚くばかりです。ユーザーが必要とすることはなんでもできる、そんなLinuxデスクトップの登場まで遠くはないですね」

 「データベースに関しては、事業の成長で(プロプライエタリ・ソフトウェアを使い続けることが)厳しい状況です。データベースをエンタープライズ・バージョンにアップグレードしてライセンス・モデルを変更するために予算が必要だと、CFOに伝えないといけません」

 「それに、Exchange 2003 Enterpriseに移行するか、Open-Xchangeのような代替ソリューションに移行するかを評価しているところです。現状のサポートを維持するために妥当な料金を支払うのはかまわないのですが、電子メール・サーバのために5〜6万ドルを出費することを組合員に納得してもらうのに、かなり苦労したばかりなので」

 「実際、それで得られるものを考えると、おそらく法外な料金とはいえないですね。でも、販売する牛乳の何kgに相当する値打ちがあるのかを伝えるのは楽じゃありません。身の丈に合った節約をできるに越したことはないんです」

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