Adobeは不要なMacromedia製品をオープンソース化すべきだ

Opinion:AdobeはMacromediaの買収で手に入れる製品のうち、自社に似つかわしくないものはオープンソース化すべきである

» 2005年05月09日 15時54分 公開
[Jim Rapoza,eWEEK]
eWEEK

 AdobeによるMacromediaの買収発表をめぐる当初の興奮が一段落した今、この取引が両社のポートフォリオに含まれる多数の製品に与える影響、ならびにこれらの製品を利用している企業に与える影響について冷静に考えてみる必要がありそうだ。

 両社の合併による相乗効果は明らかだ。中でも最大の相乗効果は、Web上で今日最も有力な2つのフォーマットであるAdobeのPDFとMacromediaのFlashが結合することだ。

 Acrobat ReaderとFlashプレーヤーがいずれ、1つの製品に統合されることは容易に推察できる(この製品は、派手な演技で知られるアクロバットチームKaramazov Brothersにちなんで「Karamazov」という名前にするのがいいかもしれない)。これら2つの技術が今後もクロスプラットフォーム対応機能を維持するならば、この製品統合は大いに評価できる。

 Adobeの「Creative Suite」とMacromediaの「Studio MX」もミキサーにかけられて、新しいWeb/メディア開発カクテルが生まれるだろう。この統合には多くのメリットがあると思う。というのも、統合によって生まれる新製品は、Adobeの現行スイートよりも開発機能が優れ、Macromediaの現行製品よりもビデオ/ドキュメント機能が優れたものになる可能性が高いからだ。

 しかしこの分野では失われる製品も多い。例えば、Adobeの「GoLive」のような優れたアプリケーションがMacromediaの「Dreamweaver」に道を譲り、同様にMacromediaの「Fireworks」はAdobeの「Photoshop」に道を譲ることになりそうだ。また、両社の合併の弊害として、開発活動の沈滞の可能性を指摘するユーザーもいる。

 合併で影響を受ける分野はほかにもたくさんある。両社はWebやデジタルメディア分野以外でも多くの製品を抱えており、Adobeが手に入れるMacromedia製品の多くは、Adobeの主要な関心分野や得意分野の範囲外にある。

 多くのITユーザーは、Macromediaの「Director」「Authorware」「ColdFusion」「JRun」などの製品がどうなるのか不安に思っていることだろう。Adobeはこれらの製品をしっかりとサポートし、改良を続けるのだろうか。それとも、隅に追いやられて放置されたままになり、サポートは続けられるものの、今後の開発やアップグレードはほとんど行われなくなるのだろうか。あるいは、Adobeはこれらの製品を完全に切り捨ててしまうのだろうか。

 DirectorやAuthorwareなどの製品を利用しているユーザーは心配しなくても大丈夫だと筆者は考える。これらの製品はAdobeのポートフォリオにうまくフィットし、e-ラーニングやトレーニングといった魅力的な市場におけるAdobeの存在感を大きく高める可能性があるからだ。両社の合併はPDF技術の発展にも貢献するだろう。

 筆者にとって気がかりなのは、サーバ関連製品や開発者向けの製品だ。例えば、もともとAllaireの製品だった「ColdFusion」は、Macromediaのポートフォリオに必ずしもなじまなかったが、Adobeに移っても状況はさほど変わらないと思われる。

 ColdFusionは今でも多くのWeb開発者の間で非常に人気が高く、Macromediaは概して同製品の改善に向けてよくがんばった。Adobeもこの姿勢を引き継ぐのだろうか、それともこの技術を放置したり、完全に切り捨てたりするのだろうか。

 JRunもColdFusionほどではないにせよ、同じような立場にある。Adobeは、自社のコア技術の配信プラットフォームとしてJRunに価値を見いだすと思われるが、この製品の改良は行われるのだろうか。それとも、単なる機能の1つになってしまい、スタンドアロンという形では存在しなくなるのだろうか。

 今後何カ月かの間にAdobeが行う決定は、これから同社の顧客になる多くの企業に大きな影響を与えるだろう。これらの企業の現在および将来のプロジェクト、アプリケーションおよびシステムは、主要な基盤アプリケーションが失われることによって大きな影響を受ける可能性がある。

 Adobeがいかに公正かつ誠実な検討を重ねたとしても、一部のMacromedia製品がAdobeの短期的/長期的計画に適合せず、これらの製品を維持するのにリソースを費やすのは賢明ではないと同社は判断するかもしれない。

 もし一部のMacromedia製品についてAdobeがこういった結論に到達した場合には、同社の意思決定者が別の方向性を検討することを筆者は望む。これらの製品をただ放置したり、完全に切り捨てたりするのではなく、オープンソースにしてユーザーコミュニティーに与えてもらいたいのである。

 「自社が必要としないアプリケーションをオープンソース化することがAdobeにとってどんなメリットがあるのか」という疑問もあるだろう。この疑問に対する最も簡単な、しかも誠実な答えは、それがユーザーコミュニティーの幸せと発展と多様化につながるということだ。

 だがAdobeはそれ以外にもメリットを受ける立場にある。Macromediaのすべての製品は長年にわたって、Adobeの新旧のコア製品とうまく連携するよう改良が行われてきた。Adobeにとって不要なMacromedia製品がオープンソース化されれば、Adobeの主要製品の普及拡大につながるだろう。

 もしそうなれば、これらの製品の一部は合併後も生き残れるかもしれない。ただし、これはあくまで可能性の話だ。

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