一人一台スパコンを持つ時代が到来、21世紀型ワークステーションの秘密に迫るInetrview(1/2 ページ)

「たくさんのマシンでクラスタを組んでdistcc走らせてみたい」そんな記者の思いはいつしか諦念へと変わっていたが、それを再び燃え上がらせてくれそうなマシンが登場した。机の下に収まるパーソナルスーパーコンピュータの実態に迫る。

» 2005年05月19日 23時33分 公開
[西尾泰三ITmedia]

 コンパイルなどをしたことがある方なら、分散処理でコンパイルの時間を短くしたいと思ったことの一度や二度はあるはずだ。余ったPCをクラスタ化するのは1つの手だが、電源の問題や、そもそも構築する手間などを考え、結局コンパイルが終わるのを延々と待つことを受け入れざるを得ないことが多かった。

 程度の差こそあれ、スパコンに関しても同じようなことが当てはまる。いつまでたっても自分のジョブが処理されないことにウンザリするかたもいるのではないだろうか。

Orion DS-96

しかし、「机の下に収まるパーソナルスーパーコンピュータ」という触れ込みでOrion Multisystemsが発表した96ノードクラスタ型ワークステーション「Orion DS-96」(DS-96)は、そんな悩みを軽く吹き飛ばしてくれるかもしれない(個人が購入するには少し高価すぎるが)。同社の社長兼CEO、コリン・ハンター氏にスパコンの新時代について聞いた。


ハンター氏 ハンター氏はTransmetaの共同創始者。Transmeta時代にはリーナス・トーバルズ氏を米国に招くなど同氏とオープンソースのかかわりは強い

ITmedia DS-96を最初に見たときはその形状からSGIのマシンを思い出してしまいました(笑い)。DS-96について簡単に教えてください。

ハンター 弊社では、昨年12ノードのデスクトップ型クラスタマシン「DS-12」を発表していますが、この製品に搭載しているプロセッサボード(Orion Processor Array)を8枚、つまり96ノードを1台の筐体に搭載したものがDS-96です。プロセッサにはTransmeta Efficeon 1.2GHzを採用しています。ちなみに、「DS」は「DeskSide」の意味で、まさに袖机のように置いて使ってもらうことを想定しています。

プロセッサボード プロセッサボード(左)とノード単体の図。ネットワーク上で独立したノードごとに専用のチップセット、ギガビットイーサネット、IDEのインタフェースなどを備える。これにより、最大で192Gバイトのメモリ(1ノードあたり最大2Gバイト)および9.6Tバイトのストレージ(2.5インチ100GバイトHDDを96個搭載時)をサポートする。CPUはファンレスで、ケースには4つのファンが備わっている。騒音のレベルは50dBA程度
DS-96内部

 ノード単体の基盤の大きさは、2.5インチのHDDとほぼ同じサイズです。そのような設計にすることでHDDを整然と並べることができるのです。プロセッサボードは筐体内部でミッドプレーンに接続され、外部とは10ギガビットイーサネットで接続されます。

 また、最初のノードはヘッドノードと呼んでおり、いわゆるコンソールノードとなるものです。グラフィックチップやキーボードなどの入力デバイスなどと通信を行うほか、DVD/CD-RWドライブと3.5インチHDDをそれぞれ1台ずつ標準で備えています。

 基盤の開発当初は、ノードごとにHDDをユーザーが要求するか分からなかったこともありこのような構造にしたのですが、現在ではユーザーの99.9%は各ノードにHDDを搭載して利用しています。

 しかし、本当に重要なのはここまでで話した部分ではありません。重要なのはこれが特別な設備を必要としないことなのです。一般的なスパコンやサーバルームにありがちなわずらわしい配線や冷却設備、そして電源設備などは必要ありません。DS-96の最大消費電力はわずか1500ワットで、一般的なコンセントを電源として動作します。一般のスパコンは極めて慎重に扱わねば個人で使うことは難しいのですが、弊社製品は個人レベルで高性能なマシンを利用できるのです。

オフィスで使うとこのような感じに。個人用のクラスタシステムはもはや夢物語ではない

ITmedia そもそもなぜこのような製品を作ろうと考えたのでしょう?

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