ブレードPCを一人一人に割り当てつつ集中管理、日立がセキュアクライアントを強化

日立製作所は、社内外における情報漏えい対策を実現する「セキュアクライアントソリューション」を強化し、ブレードPCを活用した「クライアントブレード」を発表した。

» 2005年05月23日 19時14分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 日立製作所は5月23日、「セキュアクライアントソリューション」を強化し、HDD非搭載のセキュリティPC新機種と、ブレードPCにクライアントPCの機能を集約させた「クライアントブレード」を発表した。

 同社はこれに先立つ2月15日、HDD非搭載型のモバイル端末(セキュリティPC)を用いることで個人情報漏えいのリスクを減らすセキュリティシステムを発表している。この時点では、外出先からセキュリティPC経由で社内の既存のPCにアクセスする「ポイント・ポイント」型と、シトリックスの「MetaFrame」を組み合わせてサーバベースコンピューティングを実現する「センター型」という2つのシステムがリリースされた。はじめから端末側にデータやアプリケーションを持たせないことで、たとえ盗難、紛失などに遭ったとしても情報漏えいを防ぐ仕組みだ。

 今回発表されたクライアントブレード「FLORA bd100」は、クライアントPCを搭載、集約するためのブレード型システム。ユーザーは、独自開発のミドルウェアを搭載したセキュリティPCからクライアントブレードにアクセスして操作を行い、処理結果を受け取る仕組みだ。アクセス時には、別途提供される認証用デバイス「KeyMobile」を用いてユーザー認証およびVPNによる暗号化通信を行う。

クライアントブレード クライアントPCの機能をブレード1枚に搭載し、集中管理する仕組み

 新製品のアーキテクチャは、社内のデスクトップPCに直接アクセスする「ポイント・ポイント」型に似ており、つまりはWindowsが備える「リモートデスクトップ」機能の拡張版とも表現できる。ただ、クライアントブレードはサーバルームなどで集中管理されるため、リモート環境はもちろん、オフィス内であろうと情報を手元(=端末)に持ってくることはできない。日立ではこの仕組みを「ポイント・ブレード型」と名付けている。

 「先に発表した製品がモバイル環境や社外利用での情報漏えいを防ぐものであるのに対し、今回リリースした『フェーズ2』の製品は、社内での情報セキュリティ強化を狙ったもの」(同社情報・通信グループ プラットフォームソリューション事業部 事業部長、松縄正人氏)。社内にセキュリティPCを整備しておき、KeyMobileさえ持ち歩けば、会議室や国内の別の事業所でも普段と同一の環境で利用できることも特徴という。

自社内での導入における課題を反映

 日立では今年1月より、個人情報保護法への対応をにらんだ情報セキュリティ対策の一環として、HDD非搭載型のセキュリティPCの導入を進めてきた。「情報を操作する場所には情報がない、というイメージで作っている」(日立製作所の情報・通信グループ情報システム本部本部長、中島史也氏)。2005年度中にはセキュリティPCとクライアントブレード、それぞれ1万台を導入し、これをオフィス内デスクトップにも展開していく計画だ。

 だがその作業を進める中で、「パフォーマンスが低い」「対応するアプリケーションが限定される」といった不満の声が上がってきたという。

 今回リリースされたクライアントブレードは、そういった要望に対応するものだ。クライアントブレードの環境は、ユーザーが普段利用しているデスクトップPC環境と同じ。そこに直接接続することにより、既存の環境をそのまま利用できる点が最大の特徴という。つまり、営業、開発など、個別の環境を必要とする場合や多くのPCリソースを必要とする場合に適しているということだ。

 また、性能の強化や画面表示を減色させる高速化モードの見直しによってレスポンス性能の向上を図ったほか、セキュリティPC自身のバッテリ残量や通信状況を確認できるメニューバーを搭載した。またUSBで接続する周辺装置として、ユーザー認証を強化する「指静脈認証」機能や「IP電話」がサポートされる。

 PCブレードをユーザー一人一人に割り当てて利用する、というアプローチは米ClearCubeが提唱したコンセプトに通じるものだ。しかし日立では、CADやマルチメディアといった用途ではなく、通常のPCと同じように使えれば十分という環境では価格競争力に長けている、と説明した。

古川氏 「昨日までの海外出張でもセキュリティPCを利用していた。非常に安心、安全に使えた」と述べた日立製作所執行役副社長、情報・通信グループ グループ長&CEOの古川一夫氏

 FLORA bd100は、3Uサイズの筐体で最大14台のブレードを搭載できる。価格はベースユニットが20万円、ブレード1枚に相当するクライアントモジュールはブレード12万9500円。

 また、新たに発表されたセキュリティPCは、液晶一体型デスクトップモデルの「FLORA Se310」が12万4000円、A4ノートモデルの「FLORA Se240」は12万9000円。一般的なPCに比べると高価に見えるが、「非常に強い情報セキュリティ環境を実現できる上、TCOや運用管理コストを考えれば十分競争できる価格になると考えている」(松縄氏)。

 日立では、将来的にはクライアントブレードからHDDを切り離し、仮想化技術やストレージ製品を組み合わせて、より効率的な運用やバックアップを行えるような仕組みを提供していく方針という。

 自社での導入を発表したこともあって、セキュアクライアントソリューションへの関心は高く、これまでに既に「6万台ほどの引き合いがある」(松縄氏)という。日立では製品自身の販売に加え、顧客の目的や環境に応じた導入を支援すべく、各種コンサルテーションサービスを展開するほか、サーバの運用/管理を肩代わりする「アウトソーシングサービス」も提供する予定だ。

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