IT専門家を襲う「職の衝撃」

IT関連の作業そのものは増えているが、IT職は減る一方。この新しい激動の時代を生き延びるためには、何をしたらいいのか?(IDG)

» 2005年08月02日 19時54分 公開
[IDG Japan]
IDG

 35年前、わたしのかつての上司のアルビン・トフラーは、あまりに短期間に一大変化が起きたとき、人間が体験する激しいストレスと困惑を、「未来の衝撃」という言葉で言い表した。IT Leadership Academyの研究者らは、IT業務の未来について数年がかりの研究を進める過程で、これと似たコンセプト――「職の衝撃」なるものの存在に気付いた。これは、自己のキャリアと上昇意欲がIT業務の劇的な変化・変容と正面衝突する中、IT専門家らが今まさに体験しようとしている職業上の困惑だ。

 この研究で分かったことの第一は、IT作業とIT職は、同義ではないということ。IT作業自体は増えており、より多くのデータが移され、いじられ、変形され、蓄積され、パーソナライズされ、保護されている。データは、かつてないほど多くの場所へ、多くの人間にあてて、多くの目的で送られるようになった。この事実は、一般には意識されていない。やるべき作業は増えているが、そのための職は、そう増えていないのだろう。

 ビジネススクールの教授なら、学生がいても職にありつけない理由を何百と提示できる。「4年前、わたしはWebサイトの設計で18万ドル稼いでいた。その作業が今ではインドで行われている」といった話を聞くことも珍しくない。だが、事実を明かせば、その作業は多分、スマートな機械の助けを借りながら、ユーザー自らの手で行われるようになったのだ。IT業界で起きている大きな変容の1つにオートメーションがある。かつては必ずそこにIT職が介在していたIT作業が、今では自動化され、エンドユーザーによって行われている。

 カリフォルニア大学バークリー校のハース経営大学院の元学部長で、クリントン政権で経済諮問委員会の委員長も務めたローラ・タイソン氏は、「アンチ機械派」に出くわすと必ず、すぐさま次のように指摘する。自動車の発明は馬車産業の数千の職を奪ったが、新興の自動車産業に、もっと多くの職をもたらしたではないかと。

 この認識は歴史的には正しく、『The End of Work』(邦題:大失業時代)の著者、ジェレミー・リフキン氏も、「情報化時代は多くの新しい商品とサービスを生み出すだろう」と述べている。だが、リフキン氏はさらにこう加えている。「しかしながら、こうした商品を生産するのに大量の労働力が必要だった過去と異なり、未来においては、そうした労働力が無人に近い工場に置き換わり、生産された商品はほぼ仮想化された会社によって売り出されることになる」と。これは、非常に現実的な不安だ。

 未来のことを考えるまじめで頭のいい人たちは、次のような疑問を抱いている。IT職が今後一貫して減っていくとしたら? 主にこうした職――その中でも特に割のいい仕事――で生計を立てている男女はどうなるのだろう?

 今後も生計を立てていきたいなら、次の3つが必要だ。

  1. 自分が所属する地域経済社会の中で、こうしたトレンドと、特定のスキルセットに見合った賃金を最もよく理解する人たち――すなわち、IT人材会社の担当者とのネットワークをつくること。彼らは大量のデータを持っており、快く相談に乗ってくれるはずだ。
  2. 自分の勤務先が今後歩もうとしている戦略的ステップを3つ先まで理解し、その推進役となる幹部らと個人的に深い関係を築くこと。
  3. 自ら訓練を積み、学習を重ねること。

 あなたは今後、ますます賢くなる機械、自分とスキルは同程度だが自分より安い賃金で働く他国の労働者、そして(仮にそうなることが可能ならばの話だが)あまり関心を払わない企業幹部、といったもののプレッシャーに直面することになる。職の衝撃のトラウマを克服する助けとなるのは、知識とネットワークなのだ。

※本稿筆者ソーントン・A・メイは、ベテランのIT業界オブザーバーで、経営コンサルタント兼コメンテーター。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ